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吠えよ剣  作者: 大隅スミヲ
高校二年生編

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高校二年生編(41)

 二回戦の相手となったのは、神崎と同じ東京代表の服部はっとりというやつだった。

 東京には高校が集中してあるため、東京代表だけは西と東に分かれて二人の代表が選出されている。

 神崎は東の代表で、二回戦であたる服部が西の代表だった。


 服部は身長が160センチあるかどうかといった小柄な選手だった。

 本当にこいつ強いのか。そんな疑問を覚えたが、一回戦を勝ち上がってきている以上はそれなりに強いことは確かだと思いなおし、おれは気合いをいれた。


 試合がはじまり、向かい合うと服部は上段に構えた。

 小柄な選手が上段で構えるというのはあまり見たことがなかっただけに、少し戸惑いを覚えた。


 おれは正眼に構えて、服部のことを見据える。

 上段に構えていた服部の竹刀がゆっくりと動いた。

 まだお互いが打ち合える間合いには入っていないため、おれはじっと様子を見ることにした。


 服部の構えが中段に変わる。

 その瞬間、服部は一気に飛び込んできた。

 予想以上に早い踏み込みに、おれは下がる余裕もなく、服部の打ち込みを竹刀で受けた。

 面打ちから切り返しての小手打ち。

 次から次へと来る連続攻撃を払いのけることで精一杯となってしまい、反撃をする余裕もなかった。


 胴打ち、面打ち、小手打ちを様々なバリエーションで連続で打ち込んでくる攻撃をおれはじりじりと円を描くように下がりながら何とかしのいだ。


 一瞬の隙を狙って、横面打ちを繰り出す。

 しかし、竹刀は空を斬った。


 服部はいつの間にか間合いを外して、竹刀の届かない位置にまで下がっていた。

 早い踏み込みと連続攻撃。それが服部の持ち味だということはわかった。

 だが、ここまで来た選手だ。まだ、なにかを隠し持っているに違いない。


 おれは警戒しながらも、構えを下段に変える。

 次に飛び込んできたら下から切り上げて小手打ちを狙うつもりだ。


 服部はおれが下段構えに変えたことに警戒してか、なかなか踏み込んでこない。

 向こうが来ないのであれば、こちらから行くしかない。


 おれは再び構えを正眼に戻して、一気に間合いを詰めた。

 おれが追っていくと、服部は逃げるように下がっていく。


 いつまで経っても間合いは詰まらず、苛立ちが募っていく。

 おそらくこれが、服部の作戦なのだろう。

 おれにイライラさせておいて隙を作り、そこを一気に攻める。

 そんな作戦はお見通しだ。


 おれはわざと服部の作戦に引っ掛かった振りをして、無理な体勢からの面打ちなどを出していった。


 普通ならば届かない位置からの面打ち。

 服部は完全に油断していて、竹刀で受けに入る体勢も整えない。


 確かに、このままでは服部の面におれの竹刀は届かない。

 だけれども、おれには秘策がある。

 

踏み込みの際に、軸足となった左足に力をぐっといれた。

 そして、左足の足首を回転させる。足一つ分――二七・五センチ――間合いが伸びる。

 届かなかったはずの竹刀が、完全に服部の面を捕らえる位置まで伸びていた。


「面あり、一本」

 服部は信じられないというような顔をしていた。

 その後、服部は怒涛の如く攻撃を仕掛けてきたが、おれはその攻撃をすべて竹刀で払い除け、時間一杯となった。


 二回戦も無傷のまま勝ち上がることの出来たおれは、自分の調子の良さに自信を感じはじめていた。

 このまま行けば、神崎に勝つことも、インターハイで優勝することも可能なのではないだろうかと。


 二回戦を終えて、選手控え席へ戻ってくると、岡田さんと平賀さんの姿があった。


「来てくれたんですね」

「当たり前だろ、花岡の晴れ舞台だ。面白いものが見れるのであれば、どこへでも足を運ぶさ。なあ、平賀」

 岡田さんが平賀さんに同意を求め、平賀さんは頷く。


「次あたりで、例のやつ使おうかと思います」

 おれは手の動きで巻き上げ打ちを真似して岡田さんにいう。


「そうか、期待しているぞ。でも、県大会で一回見せてしまっているんだ、相手に警戒されないように用心しろよ。あれは諸刃の剣だからな。失敗したら、お前が一本取られる」

「わかっています。そのための秘策も考えてありますから」

「秘策?」

「はい。見てからのお楽しみってことで」

「随分と余裕じゃんか、花岡くん」

「これでも緊張しているんですよ、おれ」

 そういって、おれは岡田さんに笑顔を見せた。


 緊張しているというのは、本当だった。

 だけれども、それ以上にいまは楽しくて仕方がないのだ。

 試合が楽しいなんていうとたまに「試合のどこが楽しいんだ、あれは真剣勝負だぞ。真剣にやれ」などといわれることがある。

 でも、おれにとっては試合は真剣勝負であることはもちろん、それ以上に楽しさを実感する場所でもあるのだ。


 その後もおれはリラックスした状態で岡田さんと平賀さんを相手に色々な話をして、三回戦がはじまるのを待っていた。


 三回戦、名前を呼ばれて試合会場へ向かおうとすると、神崎に出会った。


「今回も勝ち上がってきているみたいだね、花岡くん」

「当たり前だろ。準決勝で待っていろよ」

「そうだね。でも、三回戦を勝たなきゃ準決勝にはいけないからね」

 相変わらずいけ好かない野郎だ。

 おれはそう思いながら、自分の指定された試合コートへ向かった。

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