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吠えよ剣  作者: 大隅スミヲ
高校二年生編
37/98

高校二年生編(10)

 休憩を挟んで、団体戦のメンバーが発表された。

 男女混合で八人。お互いにメンバーは、試合直前まで発表しないというルールだった。


 おれは団体戦の大将ということで、最後に試合をすることとなった。

 おそらく、M学園も大将に神崎を入れてくるだろうと見込んで、大将に立候補したのだ。


 女子の先鋒は高瀬だった。

 大将は女子の主将である山縣先輩。


 男子は、先鋒に木下、中堅に鈴木先輩、副将が桑島先輩で大将がおれという布陣だった。


 そして、団体戦の幕が開けた。


 M学園の女子先鋒は、関東選抜にも選ばれたことがあるという北条つかさという二年生だった。

 剣道着を着ていない姿を見ると、どこかのお嬢様といった感じがする人で、何ヶ月か前の剣道マガジンで、特集記事で書かれていたこともある実力者だ。


 高瀬には相手が悪かったとしか言いようがない。

 だが、高瀬もここ数週間で格段にレベルアップしていることは確かだった。


 特にM学園との練習試合があると発表された先週からは、おれとの猛稽古を何本もこなしており、どんなに打ち込まれても文句一ついわずに着いてきたのだから。


 おれはこの試合を楽しみにしていた。

 相手が強ければ強いほど、高瀬は実力を発揮するタイプだ。

 先ほどの個人戦では、レベルがあまり高くない相手と当たったため、高瀬は微妙な試合をしていた。

 あんなのは本当の高瀬じゃない。

 そんなことを思いながら、高瀬の個人戦を見ていた。


 試合が始まった。


 高瀬も北条つかさもお互いに正眼の構えだった。

 どちらも隙はなかった。


 正面から向かい合うと北条つかさに飲まれてしまうかと思っていたが、高瀬はそんなこともなく、構えを崩さずにしっかりと向き合っている。


 先に仕掛けたのは、高瀬の方からだった。

 小手を狙って一歩踏み込むが、北条つかさに竹刀を跳ね上げられてしまい、逆に小手を狙われる。高瀬は巧みに北条つかさの小手を避けながら、再び小手を狙うといった予想外な動きを見せた。


 北条つかさの小手に高瀬の竹刀が当たったが、入りは浅かった。

 しつこく、高瀬は攻め続けたが、さすがは関東選抜に選ばれるだけあって、北条つかさは高瀬の攻めを難なく防いでいた。


 攻め疲れたのか、高瀬が一歩後ろに引いた。


 そこへ北条つかさが一気に攻め込んでくる。

 振り上げられた竹刀は高瀬の面を狙っていた。


 高瀬の体が一瞬、沈んだように見えた。

 抜き胴。

 綺麗に決まった。


 最初から高瀬は狙っていたのだ。


「胴あり、一本」

 M学園陣営がどよめいていた。

 まさか、あの北条つかさが無名である高瀬に一本を取られるとは思ってもいなかったのだろう。

 しかも、あんなに綺麗な抜き胴で。


 一本を取られたあとの北条つかさは、怒涛の如く攻めてきた。

 しかし、焦りがあるのか攻撃が雑になっており、剣道マガジンで取材されるような華麗な剣道はどこにも見当たらなかった。


 高瀬は冷静に北条つかさの攻撃を見ており、上手く立ち回りながら先取した一本を守り通した。


 先鋒の高瀬が勝利したことで、S高校陣営は盛り上がった。


「やったな、高瀬。あの北条つかさに勝つなんて金星だ」

「すごいわね、高瀬さん。いつの間にあんなに成長したのよ」

「なんだよ、いままで実力を隠していたのか、高瀬」

 みんなが口々に高瀬を褒め称える。


 高瀬は満更でもない笑みを浮かべ、機嫌の良い様子を見せていた。

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