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吠えよ剣  作者: 大隅スミヲ
高校二年生編

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高校二年生編(1)

 校庭の端に植えてある桜の花びらが散り始めた、四月上旬。放課後の体育館は夏場と間違えるほど、熱気に包まれていた。


 高校二年の春。

 おれは無事に進級を果たし、剣道の練習に打ち込んでいた。


 新入部員は、なんと十二人もいた。

 男女合わせて一年生が九人、二年生が三人だった。

 二年生の新入部員の中には、一年前の部活見学で木下と一緒に剣道部の見学におれのことを誘っておきながら、自分はバスケ部に入部した加納の姿もあった。


 加納はバスケ部に入部したものの、剣道部の活躍を耳にするたびに、自分の中にあった剣道魂が疼いて仕方がなかったそうだ。

 しかし、一度は剣道を捨てたのだと自分にいい聞かせてバスケットボールを頑張っていたが、どうにも自分をだますことが出来なくなり、進級を機会に剣道部への入部を決めたとのことだった。


 新入部員の内、剣道の経験者は九人だった。

 二年生の新入部員は加納を筆頭にみんな過去に剣道の経験がある人間ばかりで、未経験者は一年生の男子が一人、女子が二人だった。


 男子剣道部員たちは、主将である桑島先輩の掛け声で、竹刀の素振りを行っていた。

 ただの素振りであっても三十人近い部員で一斉に行うと、なんだか絵になる。

 その様子に顧問である小野先生も満足げな表情を浮かべて、体育館の端で練習の様子を見守っていた。


『小野先生、小野先生、お電話が入っています。職員室へお越しください』

 小野先生が校内放送で呼び出されたのは、部活の練習も終盤に入った夕方のことだった。


 小野先生は体育館に戻ってくるなり、他の部員の試合稽古を見ていた主将である桑島先輩とおれを手招きして、体育館の端へと呼び寄せた。


「来週の日曜日なんだが、練習試合の申し込みがあった」

「本当ですか」

 桑島先輩が嬉しそうにいう。


 桑島先輩は無類の試合好きである。

 なぜなら、練習試合や大会などがあると色々な高校の生徒が集まってきて、色々と交流が出来るからだそうだ。

 それだけを聞くと健全なスポーツマンといった感じだが、桑島先輩の本当の目的はそんなきれいなものではない。

 桑島先輩は汗をかいたスポーツマンが大好物なのだ。

 目を付けた恰好いい他校生がいたら、練習後や試合後であれば話しかけやすい。

 警戒されることもなく、何かと話しかけやすいのだと、桑島先輩から聞かされたことがある。


 大好きだった河上先輩が卒業してしまって凹んでいるのかと思っていたのだが、この調子だと、どうやらそんな様子もなさそうだ。


「それで、相手はどこなんですか?」

「ああ、それなんだが……」

 小野先生が名前を口にすることを少し迷っているような素振りを見せながらいう。


「なんですか、勿体ぶった言い方は」

「東京のM学園だ」

 その言葉を聞いた桑島先輩が突然飛び上がった。


「本当に? M学園っていったら……」


「ああ、そうだ。インターハイの常連高校で、団体戦では三年連続で全国制覇をしているM学園だ。しかも、向こうから練習試合をしたいと申し出があったんだぞ」

「ああ、あんなイケメン揃いのM学園とやれるなんて、あたしトロけちゃいそう」


 微妙に小野先生と桑島先輩の会話は噛み合ってはいなかったが、二人ともうっとりした目をしていた。


「でも、どうしてそんな強豪のM学園がうちに?」

「なにを言っているんだ、花岡。お前のお陰でもあるんだぞ」

「どういうことですか?」

「インターハイの決勝でお前と戦った神崎っていう奴がいただろ。あいつが練習試合の相手にうちの高校を指名したんだそうだ。東京からわざわざ練習試合をするために来てくれるんだぞ」


 小野先生にいわれて初めて気がついた。

 M学園。

 どこかで聞いたことのある学校名だと思っていたら、あの神崎隼人の学校だったのだ。


 神崎が練習試合の相手にうちの高校を指名した。

 つまり、練習試合の相手におれを指名したとも取れることだ。

 あの時はアクシデントだった。

 勝負はついていない。少なくともおれはそう思っている。

 今回の練習試合は神崎と決着をつけるまたとないチャンスだ。

 もう佐竹先輩にはフラれてしまったけれども、神崎に勝てばインターハイで優勝したのと同じことだ。

 もしかしたら佐竹先輩が振り返ってくれるかもしれない。


 おれはそんな妄想に捕らわれて、俄然燃え上がった。

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