表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
吠えよ剣  作者: 大隅スミヲ
高校一年生編
27/98

高校一年生編(27)

 大会が終わり、会場の後片付けをしていると、佐竹先輩が近づいてきた。


「おめでとう、花岡くん」

「ありがとうございます」


「これは私からのプレゼント」

 差し出されたのはペットボトル入りのスポーツ飲料水だった。


「ありがとうございます、佐竹先輩」

 聞き覚えのある声がして、おれがペットボトルを受け取るよりも先に、横から別の手が出てきて佐竹先輩からの差し入れを奪ってしまった。


「なにするんだよ、高瀬」

 おれは慌ててペットボトルを取り返そうとするが、高瀬は素早くおれとの距離を取って手の届かない位置まで逃げてしまう。


「佐竹先輩の前だからって、鼻の下を伸ばしているんじゃねえぞ、花岡」

「な、なにをいっているんだ」


 おれの反論も虚しく、高瀬はペットボトルを奪ったまま、体育館の端へと逃げていってしまった。


 佐竹先輩はそんな高瀬とおれのやり取りを見て笑っている。


「あらあら、ヤキモチ焼かれちゃったみたいね。剣道は強いし、可愛いんだから大切にしてあげないと、彼女のこと」

「やめてくださいよ、先輩。彼女なんかじゃないですよ」

 おれは慌てて否定する。


「あら、そうなの。私にはお似合いなカップルに見えたんだけどなあ」

「おれはいまでも佐竹先輩……」

「もう、諦めなさいよ」

「えっ?」


「いつまでも私なんかを追いかけていることないのよ。私にはちゃんと彼氏もいるんだし」

「おれは、それでも構いません」


「ごめんね。私には、花岡くんは可愛い弟みたいにしか見えないの。酷ないい方かもしれないけれども、恋愛対象外」

「そんな……」


「もっと、周りをしっかりと見なさい。花岡くんのことを気に掛けてくれている人はたくさんいるんだから。そういう人たちに気づいてあげないと」


 そのあとも佐竹先輩は色々といっていたが、おれの耳には何も届いては来なかった。



 フラれた。完璧にフラれた。



 おれは県内で一番高いビルである県庁の屋上からどん底まで叩き落された気分だった。


 こうして、おれの高校一年の冬は終わり、そして佐竹先輩への恋も終わってしまったのだった。



【高校一年生編 了】

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ