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私の話。  作者:
95/125

九十五編

 聞いた話。


 物に魂が宿ると古来から言われ続けている。万物には魂があると言われ続けている。

 ではその魂はどこからくるのだろう。


 蔵掃除だった。彼らは漆喰(しっくい)の古ぼけた土蔵を掃除していた。

 昭和初期の頃から掃除らしい掃除はされていなかったのだが、祖母が今年こそはと言い出し、実行することになった。

 とりあえず荷物を外に運び出し、積み上げる。彼の父はお宝が見つかったら一割やるぞと笑った。全てを運び出すと、蔵の下に分厚い扉を見つけた。男衆で重い入り口を開くと急な階段が現れた。道は狭く、浅い。祖父はこんなものがあったのかと驚いた顔をした。

 中には古い本や巻物が雑な作りの箱に入れられている。パラパラと本をめくる父の手元から異形(いぎょう)の生物の絵が見えた。

 とりあえず出してから処遇を考えようと、三人はそれらを明るい場所に出すべく、それぞれが荷物を抱えた。

 彼は隅におかれた小さな箱を両手に持つ。小さいながらも重い。あまりの重さに階段の途中で彼は座り込み、蓋を開けた。何が入っているのだろうと。

 漆塗りの箱に入っていたのは三頭身の日本人形。白い顔に赤い唇、(あで)やかな着物。

「人形、にしては重いよな」

 彼は人形を持ち上げた。軽い。箱も同じく軽かった。

 どういうことだろうと人形を眺めていると、人形の目がぐるりと動いた。

「うわあっ!」

 みっともない声を上げて人形を投げる。光の届かぬ階段の下に人形はころりと転がっていく。不意に下から何かの囁くような声が聞こえた。 彼はじっとりと汗をかいて、階段を駆け上がり扉を閉めた。

 ここに置かれたものは遥か昔に封印された何かにしか思えなかった。

 呪われた品々を封印していたのだと。

 父と祖父にすぐに出したものをしまうように声を掛ける。縁側に座る二人は熱心に説明する彼の言葉を無視して、ぼんやりとした顔で空を眺めた。

「二人とも聞いてるか!?」

「絵が……逃げた。逃げたんだよ」

 真っ白な巻物を広げて、二人はそういった。


 すぐに出したものを閉まったが、絵の中身とあの人形だけは行方不明のままなのだという。

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