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私の話。  作者:
83/125

八十三編

 聞いた話。


 日常と非日常の境目はとても曖昧だ。簡単なことで壊れる。

 壊れたあとは元に戻らない。

 そしてチャンスは一度だけしかない。


 彼はある日、鍵を拾った。飲み屋が並ぶ駅前の汚い路地裏だった。

 友人と飲んだあとの帰り道で、妙に風は冷たい。彼は何気ない気持ちで足元の鍵を持ち上げる。

 黄金色(こがねいろ)に輝く真鍮(しんちゅう)で出来ていて、おうとつの少ない鍵。時代劇に出てくるような古くて無骨な形だった。

 彼はそれを手に持つと、特に考えもなしに横の灯りのついていない店の鍵穴に差し込んだ。鍵のサイズは明らかに合っておらず、入るはずがなかった。のにも関わらず鍵穴はズルズルとそれを飲み込んでいく。

 押し込み、回す。かちゃりと鍵が開いた。

「……あっ」

 周りが暗くなり、ぼうっと灯火(ともしび)のようなものが店の奥で光ったような気配がした。


 そこで彼は言葉をやめ、興奮した面持ちで私に聞いた。吐く息は酒臭いが、顔ははっきりとしていて、頬は引き攣っている。

「お、俺がそこで何を見たと思う?」

「さあ? 分からない。でも、それに二回目はないと思う」

「……ああ、そうだ。そうだな、俺もそう思う」

 彼は雨などこれっぽっちも降っていないというのに、全身を濡らし、ズボンは泥まみれにしていた。

 彼はどこに行き、何を見てきたのだろう。

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