八十編
聞いた話。
巨人伝説ははるか昔からある。ギリシア神話に出てきたオリンポス十二神と対立したティーターン神族が有名な例だろう。
では小人の伝説はいつからあったのか。そして巨人伝説よりも小人伝説の方が多いのは何故だろう。
中学の美術教師から聞いた話。
彼が学生の頃、ミニチュアについての実施があった。絶妙な力バランスと細心の注意が求められる難しい授業。
ある時、その筋では有名な芸術家が特別講師としてまねかれた。彼女は小指のつめ先のサイズのイスや本を作り、実際に読めるようなもの、使うことのできるものを作ることを得意としていた。
学生は彼女の作品を実際に見せてもらい、驚嘆した。その完成度もそうだが、本の隅に書かれたメモの跡やデザインなど芸が細かかった。
そんな作品に魅せられた学生のひとりが彼女に質問をした。
「どうすればこんなにリアルなミニチュアを作ることができるんですか?」
「妖精と仲良くなれば、彼らが勝手に作ってくれるわよ」
みな彼女なりの冗談だと思った。
ある日、物理を勉強している友人にその写真を見せるとその友人は酷く驚いた。
「写真、この倍率で本当にあってるの? これ、ありえないよ。まずね、このサイズの文字を書くためのペンを作ることが物理的に不可能。製本もこのサイズじゃ紙が耐えられない。それこそ本当に小人が作らないかぎりムリムリ」
教師は当時のその言葉が妙に頭に残っているといった。




