表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の話。  作者:
74/125

七十四編

 聞いた話。


 学校の成り立ちを調べるなかなか興味深いことが分かることがある。私の住んでいる町についていえば大抵が墓の上に建てられたものだ。

 故にそういうものが学校に多いのはある意味当然なのかもしれない。


 彼女の高校には奇妙なものがあった。屋上前の踊り場にあるグリーンの公衆電話。取ってつけたような台に乗せられたそれ。

 近場の職員室前にはそれよりも綺麗で新しいものが設置されている為、誰も屋上の電話は使わない。そもそも何故そんな不便な場所に置かれているのだろうかとみな疑問に思っていた。そのことをどの教師に聞いても口を濁すばかりで理由は語らない。長年その高校にいる強面、とされる教師ですらその話題は避けた。


 彼女はある日、放課後に二人の友人と公衆電話を調べることにした。

 四階、屋上前の隅。掃除用具入れの側にそれはあった。

「とりあえずどこかに掛けてみようか」

 代表として彼女が受話器を取ることになった。受話器を掴んだ瞬間。

 ジリジリと公衆電話が鳴った。

 驚いたこともあってか、彼女は受話器を取りこぼした。ぶらんとコードを支えに受話器が宙を揺れる。

 不意にどこからか音が聞こえた。

「あれ……? これって」

「エリーゼの……」

 『エリーゼのために』がどこからか聞こえる。

 直ぐに彼女たちはそれに気がついた。受話器から直接、聞こえているのだ。ノイズが混じったような不快な電子音。そしてその裏で口ずさむ誰かの歌と、受話器から零れる赤錆とも血ともつかない奇妙な液体。

 訳の分からない恐怖に動けないでいると、血液のような赤い液体はつうっと彼女たちの元へと走った。上履きのつま先にそれが付着した瞬間。

 ぶわりと彼女たちの口の中に血の味が広がった。鼻を突くような鉄さびの臭いに彼女たちはパニックになった。

「っ!!」

 溺れそうな程の血の味。

 一人が嗚咽するように唾液を床に零した。

「……そ、それ! 色!」

 赤かった。


「直ぐに逃げたけどさ、結局なんだったのか訳の分からないまま終わったんだ。…………次に調べようとしなかったのって、自分だったら調べる?」

 絶対調べない、と私は笑った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ