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私の話。  作者:
72/125

七十二編

 私の話。


 見えるとして、その世界は私の見える世界とどう違うのだろうか。

 ほんの少しだけ見てみたい気もする。


 彼女の運転する軽自動車に私は乗っていた。彼女は嬉しそうにいう。

「あ、霊柩車だ」

 片側二車線の道路を金色に光る霊柩車が止まった。私たちの車もそれに合わせるように止まった。信号待ちだった。

 私は親指を隠すというのはどういう時だっただろうかと、はやりの歌謡曲を背景にぼんやり考えた。

 信号が青になり、彼女がまたいう。

「しかも、忌蛍ついてる」

「いみぼたる?」

「えっ、そういうの知らない? 生きてる時にろくな事しない人は忌蛍がつくっていうの……」

「そもそも蛍が見えないけど」

「そう?」

 昼の光のためか蛍は見えない。彼女は光っているというが私には見えない。

「忌蛍って別に死んだ時じゃなくてもさ、見れるもんだよ。ほら、一見普通の人に見えるけど、なんか嫌な感じしたり、この人は良くない人だって気がつくときあるじゃない。それって忌蛍が光ってるからなんだよ」

 きっと見える人には見え、感じ取れる人には感じ取れるものなのだろう。

 少し沈黙したあと、私はそういった(たぐい)のものはよく見えるのかと聞いた。

「うん、よく見る。そこにもあそこにも、君の周りにもいつもついてる」

 少し遠い目をする彼女の透き通った瞳が少し恐ろしかった。

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