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六十七編
聞いた話。
ある人はいう。天国などないと。
ある人はいう。空に国などないと。
ある人はいう。もしかしたらあるのかもしれないと。
ある晴れた日、田んぼのあぜ道に大きな岩が降ってきた。目撃者は多く、そしてそれは到底人の運べるようなサイズではなかった為にイタズラで誰かが置いたという理由は除外された。
近くに山はなく、何故どうしてどうやってその石が降ってきたか謎だった。
何かあってはということで、名のある神社の神主や寺の坊主に見てもらうことになった。半信半疑だった彼らも苔生したその石を見ると顔色を変えてこういった。
「是非ともうちに引き取らせてもらえないか」
しばらくすると、神社本庁の人間と名乗るものがやってきて国がその石を没収するということになった。
その翌日、石は消えてなくなっていた。
大きさが大きさだったため誰も盗めないだろうと見張りのようなものはいなかった。
結局何一つ分かることなく、全てが謎に消えた。
ただ、その岩のあった窪みにはそれぞれ季節の違う野花が咲き乱れていたという。