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私の話。  作者:
59/125

五十九編

 聞いた話。


 もしも自分が異星人だと知ったら、どう思うだろうか。もしも自分が人ではないと知ったら、どう思うだろうか。

 あなたはもしも自分が人ではないと知ったらどう思う?

 私は。


 彼女は古い家柄の人間だった。神に仕えた家の血の者で、その名前も仰々しい名前だった。

 夏休みのその日、彼女は祖母の家に遊びに来ていた。両親と祖父母は何やら難しい話をしていて、自分が入れる空気ではなかった。だから彼女は一人で散策という名の遊びをすることにした。

 和室の水墨画や乾いた匂いの倉。屋根裏の埃くさい部屋。立派な庭と大きな木。

 そして甘ったるい匂いのする祖母の化粧室。洋室のそこは何かの通販の雑誌やら新聞が隅に積まれていて、使われていない場所には埃が溜まっていた。

 室内は薄暗く、小さな窓につけられたカーテンから漏れる浅い昼の光だけが室内を照らした。

 彼女は祖母の古い眼鏡を見つけて、それを掛ける。瓶の底のように分厚く重いレンズ。ピントが合っていないからか視界はぼやけ、目眩がした。

 両親のところに顔を出す。

 父は眼鏡を掛けた彼女を見て、目が悪くなるぞと言った。祖父は嬉しそうにニコニコと笑う。

 母と祖母の姿が見えず彼女は首を回す。二人は台所の方で料理をしていた。

 二人に近づき、声を掛ける。

「ねえ、おかあ…………きゃあああああああああああっ!」


「つまり、おばあさんとお母さんは人の形をしていなかったと?」

「……はい。それからすぐに眼鏡は取り上げられました。眼鏡なしでみた二人は普通の顔だったんですけど、でもどこか慌てていたっていうか……。なんか、こう、嫌な感じでした」

 その後、眼鏡の行方は分からなくなったと彼女はいった。

「もしもあの眼鏡を掛けて鏡を見たら……何が映ったんでしょうか?」

 彼女は不安げにそういった。

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