四十一編
聞いた話。
あるネットのオフ会に参加した時に男から聞いた話。
男は祖母の家で暮らしていた。二人きりで暮らしいたが数年前に祖母は他界し、今は彼しか住んでいない。
昔から奇妙なものが家に潜んでいることは薄々気づいていたが、最近は特にそれが酷い。
空襲が酷かった地区で、犠牲も相当なものだったと聞いてはいるが、あんまりだと思った。
居間でぼうっとテレビを見ていると寒気がした。後ろ見ると擦りガラスを黒い何かが通り過ぎた。
人かとも思ったが、それには足が無かった。
都合がついたら直ぐに除霊を頼もうと思った。
夜、茶の間の部屋の隣で彼が寝ていると急に目が覚めた。
喉の渇きに水でも飲もうと起き上がろうとするが、体が動かない。眼球すらも動きを止められ、瞳は真っ直ぐ薄暗闇を見つめる。
声を上げようにも言葉に詰まったように音が出ない。ぞわぞわと足から全身が冷え始める。
すうっと襖が開く音がした。ペタペタと何かが畳みを素足で踏み歩く。
ダンダンダンダン。
急にそれは力強く地団駄を踏んだ。
「わーーーーーーん! わーーーーーーーん!」
彼が恐怖に縮こまっていると、それは急に叫び声を上げて部屋中を駆けずり回った。
子供の声で叫び、暴れる。
どたどたと布団の周りを走り回り、耳元で叫んでいるかのような大声で喚く。
彼が心の中で勘弁してくれと願っていると不意に音は止まった。動かなかった体も急に動くようになった。
冷えた汗を拭い、彼は起き上がり思った。
もう、耐えられない。
明日にでも坊さんを呼ぼう。
彼がそう決意した瞬間。
「痛い……痛いよう」
しわがれた老婆の声が耳元ではっきりと聞こえた。
次の日、彼はアパートを借り、霊媒師に頼み、念入りにお祓いをしてもらった。その後、業者に頼み、家を建て直した。
それ以降、おかしなことは起きなくなったが、同時に彼は明かりを消して寝ることができなくなった。