三十二編
私の話。
偶に何故こんなところで、という場所で事故の跡をみることがある。
開けた場所での事故なんて起こりそうにもないに、何故だろう。
学校からの帰宅途中で空はオレンジ色に染まっていた。その時の私は自転車に乗りながら、広い交差点で信号を待っていた。
ほんの数秒前に信号が変わったばかりで、目の前を自動車が通り過ぎていく。
私は少し待ちそうだと考え、当時まだ珍しかったミュージックプレイヤーを取り出した。曲を選択するために操作する。
目の端には黒いランドセルと赤いランドセルの小学生低学年と思わしき子供がいた。私と同じように信号を待っているようだった。
不意にその二人が横断歩道を渡った。彼らを目の端で捉えていた私は、信号が変わったのだと思い、プレイヤーを操作しながら道路に出た。
瞬間、車のクラクションが響いた。
はっとなって信号を見る。まだ赤。
車の運転手は私を睨んだ。私は焦りつつ、頭を下げて後ろに引いた。車が前を忙しそうに通り過ぎる。
子供達の姿はどこにもない。
私は急に言い知れようの無い恐怖を覚えた。
確かにいたのだ。
彼女達、彼らは。