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私の話。  作者:
30/125

三十編

 聞いた話。


 半ば都市伝説となっている話。

 多くの人が前日彼と会った、ないし会話したという話を聞く。


 彼女はいつもの帰り道を通って帰宅しているところだった。人気の無い道を通り、タバコ屋を過ぎた。

 そこでジリジリと何かがけたたましくなった。

 ふと振り返る。何も見えない。しかし、音は鳴り続けている。

 ようやくそこでタバコ屋の電話が鳴っているのだと気がついた。ピンクの公衆電話。

 店を覗くがいつも座っているはずの老婆はそこにいない。

 彼女は善意でその受話器を取った。

 老婆は今はいないと伝えてやろう。

 そう思った。

「もしもし」

「もしもし」

 大人の男性。どこか丁寧な雰囲気のする声だった。

「今、お婆ちゃんいないみたいなの」

「いい未来と悪い未来、君はどっちが知りたい?」

「え?」

「どっちか一つだけ教えてあげるよ。どうする?」

「え、あ……じゃあいい未来」

 彼女はとりあえず言葉を発してみたといった感じで答えた。

「明日酷いことが起こるよ」

 何を、という言う前にその電話は切れた。

 なんだったんだろうと彼女は首をかしげた。


 次の日、彼女の住んでいる町であの地震、阪神淡路大震災が起こった。


「みんなこの話を聞くと、悪い未来も同じ内容なんじゃないのっていうけど、私はいい未来を引き当てたと思ってる。じゃないと……悲しすぎるじゃない」

 彼女は少し悲しそうにそういった。

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