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私の話。  作者:
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二編

 私の話。

 

 そんなことがあってたまに起る“変なこと”の理由に私は気づかされた。とっていも、それは本棚から本が落ちたり、消したはずのトイレの明かりが点いていたりといった些細なもの。

 実害がないといえばないのだが、やはりその“変なこと”はどこか薄気味悪く、後味の悪い何かを残した。

 そしてこれもまたその一つだ。

 

 基本的に家の天井は高い。一般的なものがどうかは分からないが二メートル以上あるのは明らかだった。その為、必然的にカーテンの位置も窓も高くなり、カーテン選びとそれを掛けることに苦労したものだ。

 その日、私は折り畳みの机をその長いカーテンの側に向ける形で勉強していた。試験が間近に迫っていたこともあり、その作業は深夜二時まで続いていたように思う。

 当時、部屋の暖房は小さな電気ストーブだけで、私は襲い来る部屋の湿気と冷えた空気に毛布を被りながらブルブルと震え、勉強を続けていた。

 そしてそれは唐突に起った。

 ドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドンドン。

 窓ガラスを両手で力強く叩く音。急かすようなそんな音。

 私は急な音に驚き、不良である姉が窓から入れてくれといってるのかと思った。故に私は姉の名前を呼んだ。

「……○○?」

 すると叩いていた音はぴたりと止まった。しんとした圧迫感のある静寂があたりを包み込む。

 ガッガッガッガッガッ。

 今度は無理矢理窓を開こうとする音。しかし窓には鍵が掛かっているため、引っかかるような音がするだけ。

 明らかに姉ではない。姉なら声を出せばいいだけ。

 では、何故相手は声を出せないのか。

 私は目の前の青いカーテンを開きたい欲求に駆られた。しかし、ホラー映画でそういう人間がどうなるかをよく知っていた私は衝動を抑え、その手を止めた。

 このアパートは人目につかないし、辺りは寂れたビリヤード場と蔓や草木に覆われた廃屋が覆っているため意図的でない限り、アパートの敷地内に入ることは出来ない。ということはそれは必然的に目的があり、私の部屋に用があるということ。

 では。

 何が目的でここに?

 誰がここに?

 こんな時間に?

 ぞっとしたつかの間、その音はそれ自体が目的だったかのようにぴたりと止んだ。

 ただ静寂が辺りを包んだ。


 もしもあの時、鍵を開けたままにしていたらどうなっていただろうと思うと寒気がする。

 それ以降同じようなことは起らなかったが、私は今でもあの時のことを姉に聞くことが出来ないでいる。

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