十六編
聞いた話。
ちょっとしたイタズラも見方を変えれば恐ろしいものになる。
ある大工から聞いた話。
依頼があった。だから彼らは家を建てる。
その日は枠組みを作り、コンクリート流し込み、形を整えて終わった。侵入防止の為にブルーのシートを被せる。
次の日彼らは落胆した。
「……ああ、くそ。悪ガキめ」
シートは剥がされ、子供の靴跡がコンクリートにつけられていた。一本の足跡がコンクリートの中心まで伸びている。
また塗り直さないといけないと苛立つ。そこで一人が何かに気づいていう。
「あれ、変じゃないですかこれ」
「どこが?」
「いやだってほら……」
彼のいわんとしていることが全員に伝わった。
コンクリートに残った靴跡は中心で途切れている。では子供はそこからどうやって抜け出したのか。
端から端へ行くのなら簡単だが、中心で突如その場から消えるということは普通の人間には不可能だった。
「羽でも生えていたんですかね」
「……た、多分同じ足跡の上を戻ったんだろ。そうだ、そうに違いない」
周りは無理やりそう納得し、作業を始めた。
何かいい知れようのない違和感だけが残った。




