十四編
聞いた話。
兄から聞いた話。兄は友人が多く、そういった場所によく行く友人もまた、多かった。
ある五人が車で有名な心霊スポットに向かった。そこは工事の時からいろいろあったらしく、今では放置された場所だった。
曰くトンネルの奥の隅、そこに作られた小さな休憩所(工事する人間の?)のような場所に何かが出るという。
彼らは車内でお決まりのエピソードを語り、雰囲気を盛り上げた。途中、女性がお経が聞こえたなどといい、更に恐怖は高まった。
現場についた彼らはスピードを落とし、音楽をかけながら車を進ませた。何かを見かけたら報告しあうことになっていた。
森を抜け、トンネルに入る。中は薄暗く、のっぺりとした暗闇は不気味だった。
ヘッドライトで道を照らしながら進む。しかしあるのはくたびれた看板や、木材。何に使うのか分からない工事の道具。
当時のままの姿がそこにあった。
彼らは案外普通だね、などと言い合い笑った。
ふいに。
一人が叫びだした。
尋常とは思えない叫び声、咆哮。もしくは悲鳴。瞳孔は開ききり、汗を流して車の外を見ながら叫ぶ。
何人かが名前を呼んで意識を窺う。残りの何名かはただ唖然とそれをみた。
叫びを上げた男は何かを口走ると車の扉を開け、トンネルの奥へと消えていった。
数秒ほど沈黙が車内を包み込み、次に彼らは慌てふためいた。
「ちょっとちょっと、あたしたちを驚かせようとしてるんじゃないよね!?」
「……し、しらねえよ。そんな打ち合わせしてないし、なんなんだよ!」
「それよりもどうすんだよ! アイツ、戻ってこねえぞ!」
「き、きっと暫くしたら戻ってくるよ」
でも。
もしも戻ってこなかったら?
そんな言葉が彼らの中に沸いて出る。
相談の結果、やはり彼を見捨てられないということになり、彼らは奥へと向かった。
途中で見つかることを祈りながら進むも一向に彼は見つからない。
そうこうしてるうちに行き止まりにぶつかった。
前方は崖で、崖の近くには小さな小屋があった。
先ほどの彼が崖に向かって落ちていないとするならば、小屋の中しか彼の逃げ場はない。
そしてその小屋は出ると有名な場所。
車内の一人がその小屋の扉が開いていることに気がつく。
男性二人が彼らを探しに向かい、残りの女性が車内に留まることになった。
二人の男はライトを照らしながら恐る恐る彼の名前を呼んだ。
奥に人の気配。
軋みを上げる扉の向こうに、小さく丸まり、ガタガタと震える男の姿があった。
声をかけるも意識はなく、ただ震えている。
二人は彼を回収すると大急ぎでそのトンネルを出た。
意識を失った男は何故自分が意識を失ったのか、何を見たのかを未だ答えないという。