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私の話。  作者:
120/125

百二十編

 聞いた話。


 例えば、そう。あなたを知っている人がこういう。

「さっき向こうにいなかった?」と。

 でもそれを聞いたあなたはきっと、彼ないし彼女の勘違いだと思うだろう。相手も違うといわれればそう思うはずだ。

 だけど、それが違うとどうしていえるのだろうか。


 長い夏休みの一日、彼は友人の家に遊びに来ていた。どうやら友人の両親はいないらしく、ゲームはし放題で、騒ぎ放題だった。

 数人の友人とゲーム大会を開いた。コントローラーが足りないせいで、彼はあぶれたが、誰かが負ければ自分の出番が回ってくる。出番がないときはお菓子をつつきながら、窓辺に吊るされた鳥かごのインコを眺めて遊んだり、本棚から漫画を拝借して読んだ。


 ある時、自分の番がなかなか回ってこないことに彼は退屈を覚え、寝てしまった。友人のひとのウチで寝るなという笑い声にほくそ笑みながら彼は瞼を閉じる。

 茹だるような暑さに目が覚めた。なまった体を起し、辺りを見渡す。青かった空も夕暮れの色に染まり、室内はオレンジ色に統一されていた。

 窓辺に友人が座っている。何かを食べているようで、ボリボリという音。

「あれ……三人は?」

 そう彼が友人の背中に問いかける。友人は一度も振り向かず背中越しに答えた。

「近所のコンビニに買出しにいったよ」

 平坦な声。そしてまた何かを食べるのを再開した。彼は立ち上がり、自分もコンビニにいってくる有無を友人に伝えた。

 友人は何も言わなかった。


 靴を履き、家から出たところで友人らと出くわした。

 彼らは「おはよう」と笑いながらいう。彼はおはようと答えた後に、その場で固まった。

「あれ、お前今家にいたよな?」

 部屋にいたはずの友人が目の前にいた。

 家に戻るも、いたはずの友人はおらずただ空の鳥かごが何かを言いたげに口を開けていた。


「夢とかそういうのならいいんだ。でも、じゃあインコはどこにいって、あれは何を喰ってたんだって話だよな」

 薄笑いを浮かべて彼はそういった。

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