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私の話。  作者:
12/125

十二編

 聞いた話。

 

 兄が高校生で原付の免許を取ったばかりの頃の話。

 

 彼は仲間とツーリングに出かけていた。当時、彼は私と同じH市に住んでいて、友達もまたH市の人間だった。

 彼らはいつものルートで隣のH県付近まで来ていた。そこは山道で、ツーリングにくる者が多く、また事故も多い場所だった。

 いつものように十数人で彼らは深夜の山道に入る。兄はその最後列で、後ろには親友を乗せていた。

 走りなれた一本道。お馴染みのツーリングコース。

 そのはずなのに迷った。見たこともない道をただひたすら進む。

 彼らは森の中で一度止まると、互いに相談し合った。

「とりあえず真っ直ぐ進めば道に出られるだろ、一本道だし」

 そう誰かがいい、彼らはその通りに道を進んだ。人数が揃っていることもあって、不安や恐怖というものはなく、全体をどうにかなるだろうという空気が包んでいた。


 暫く進むと分かれ道が見えた。

 だが関係ない。予定通りそのまま真っ直ぐ進めばいい。

 そのはずなのに、前のバイクは止まった。

 兄は慌ててブレーキをかける。

 不思議そうな声で親友が彼に声をかけた。

「みんな何で止まったんだろう」

「さあ?」

 さらに不思議なことに友人達はどんどん右に曲がっていく。予定とは違う行動に兄と親友は眉をひそめた。

 視界を遮っていたものがなくなり、前が見えてくる。

 そして納得した。

 後ろの友人は彼の肩を揺すり、耳元でヒステリックに言葉を繰り返す。

「やばいやばいやばいやばい、あれはやばいって!」

「……………………」

 正面の中心にそれはいた。

 髪は長く、真っ白なワンピースを着た女がじっと地面を睨んでいる。

 表情はその長い髪で窺うことができない。腕は力なく伸びている。

 ぴくりとも動かない。

 最後の一台になった彼らは他の人間と同じように右に進んだ。

 直進はできなかった。

 右に進み、道を走っているといつの間にか普通の道にいた。

 彼らは休憩所に停車すると、互いに先ほど見たものを確認し合った。

 

「あの時、顔をみてやりゃよかった」

 そういって兄は笑った。

 後日、同じメンバーでその道を探したが何故か見つからなかったという。

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