百六編
聞いた話。
古い建物と新しい建物は圧倒的に存在感が違う。
壁や床から感じられる何かが圧倒的に。
そこは現代でも現存している有名な城だった。内部は過去のものをそのまま流用した博物館のようになっている。
歴史の授業の一環ということで学年全体でそこに来ていた。遠目からみても天守閣は大きい。
グループ行動になり、彼らは城の内部に入る。中は昔の姿をそのまま流用した博物館になっていて、一般の客も多く、敷地内は騒がしかった。
ガラスケースに入れられたよく分からない巻物を眺めていると、急に喧騒が消え失せた。先ほどまでいた一般客がいない。彼らはどういうことだろうと辺りを探す。
仲間内の一人が細く続く長い道を見てぼうっとしている。グループの一人が声をかけた。
「どうしたの?」
しかし、答えない。
周りはそれを見て不思議に思い、近寄って見ているものを自分たちも眺めた。
真っ直ぐ伸びた板張りの床を十二単を着た女がゆっくりと横切っていた。後ろには二人のお付きの人。
ちらりとこちらを横目で見て微笑む。それらが見えなくなるのと同時に喧騒が帰ってきた。
彼らは自分たちはまだ先ほどの静寂の中にいるような気がして、しばらくは何一つ話せなかった。
「伝説の多い城だからかな、結構見る人はいるみたいよ」
そういって笑った。