第6話(最終話)
ボディビルのポージングは、筆者がど素人なため、ふわっと「なんとなくこんな感じ」でご容赦お願い致します。
「ふぅ〜ようやく見つけたわ。死ぬかと思ったけど...」
「見つかって良かったですね」
「貴女は元気ね」
「忍者ですから」
「あっそ」
ようやく、やっと、マジ、ホントに、よ〜うやく見つけた一株の「星の雫」を大切に仕舞って、てくてくと下山する2人であった。
しばらくすると...
「馬?」
「馬のようですね」
近づいてみると...
「あ、血だ」
「どうやら怪我してるみたいですね」
「う〜ん」
「ポーションは無いのですか?」
「ええ、ほんの薬草採取のつもりで、ここまで大変だとは思わなかったのよ。だから持ってないわ」
「チッ、使えねー」
「何か言った?」
「いえ、何も...」
ディアナは悩んだ。マジ悩んだ。やっぱり悩んだ。
「うぐぐ...ん〜仕方ない、乗りかかった船だ」
「馬、ですけど...」
「やかましいわっ」
コポコポ
「何してるんですか?」
「ポーション作ってるの」
「え、作れるのですか?」
「当たり前でしょ!私これでもポーション職人よ」
「いえ、材料があるのかな?と」
「あるわよ」
「まさか」
「ええ、「星の雫」よ」
「いいのですか?」
「いいのよ、「星の雫」はまた取りに来れるけど、この子には「また」は無いからね」
「グスン。お嬢様は優しいですね」
「放っておいたら寝覚めが悪いだけよ」
「そうですか」
「よし!出来た」
ディアナは馬?に近づき、エリクサーを飲ませた。
馬?が虹色に輝き、傷が一瞬で治った。
「どう?お馬さん」
その時、大きな音を立ててバッサとユニコーンが現れた。
『妾の息子に何をしている』
親ユニコーンはお怒りの様だ。
「えっと、馬...じゃなくてユニコーンのお子様でしたか。すみません、怪我していたので、エリクサーで勝手に治療しました」
『何?エリクサーじゃと?』
「はい、頂上で採った「星の雫」を使いました」
『ほ「星の雫」...それはなんと...礼をいう、人の女よ」
しばらくすると子供ユニコーンがムクリと起き上がった。
『あ、あれ?痛くない?』
『おお、アレクシス。気分はどうじゃ?どこか痛いところは?』
『は、母上、えっと、はい大丈夫です』
『そこの人の女が治してくれたようじゃ、礼を』
『あ、はい。ありがとうございました』
「いえ、いいんですよ」
『そなた、名前は?』
「あ、申し遅れました。私はディアナ。ディアナ・シュナイダーと申します。こちらはメイドのシノブです」
「シノブです」
『うむ、息子が世話になった。感謝する。ディアナ、シノブ』
「いえ、材料があって良かったです」
『妾も礼をせねばならんな。アレクシス』
『はい、母上』
『人の姿になって、彼女らをミスリルの鉱脈へ連れて行ってくれ』
『分かりました』
アレクシスは人の姿に変身した。
「キャーーーーーー細マッチョォーーーキャーーーーーー」
『え、ディアナはどうしたのじゃ?』
「あ、え、えっと、お嬢様は、その、細マッチョが好き、というか」
『なんと!人の姿のアレクシスが、その細まっちょというのか?」
「は、はい、そうです」
『ディアナとやら』
「あ、はい...」
『我らはあまり人の縄張りには行かん。なのでディアナとシノブが時々来るが良い。ああ、ミスリルの鉱脈で何かあればアレクシスに頼れば良い。もちろんアレクシスは人の姿でな』
「あ、あ、あ、ありがとうございます」
「ありがとうございます」
テッテレー!ディアナとシノブに細マッチョ(ユニコーン)のお友達ができた。
『ミスリルの鉱脈は好きに使うが良い。採掘は任せる』
お礼を言ってからユニコーンの母親と別れ、人の姿になったアレクシスと一緒にミスリルの鉱脈に行き、アレクシスとも別れ、2人は帰路についた。
人の姿になったアレクシスにディアナが終始ベタベタしていたのは内緒である。
「ふんふん〜細マッチョぉ〜ふんふん〜アレクシスぅ〜ふんふん〜」
「超ご機嫌ですね。謎の歌、歌ってるし」
「そう?」
「そうですよ」
超ご機嫌なディアナ、とシノブは、すっかり忘れていた薬草採取の依頼を思い出し、ちょちょいと採取してギルドに帰って来たのであった。
〜からん〜
「「「「ディアナの姉御、シノブ殿、お勤めご苦労様でした」」」」
「な、な、なんだ。てかムショ帰りかっ!」
ギルドに入るとギラド(ディアナを殴った奴)のパーティが出迎えた。
「姉御、今朝は殴って申し訳ありやせんでした。我らパーティはディアナの姉御とシノブ殿の舎弟になりやす」
「別にそんなのいいのに」
「そういうわけにはいきやせん。我らにも冒険者としてのプライドってのがありやす」
「あはは...そうなのね」
テッテレー!ディアナとシノブにゴリマッチョ(ギラドとそのパーティ)の舎弟ができた。
そして、薬草を納品して、冒険者としての初日が終了したのであった。
ーーーーーー
シュナイダー侯爵邸
「ふぅ、今日は疲れたわね」
「お嬢様ぁ〜湯浴みの準備できましたよ」
「はーい」
しばらくした頃...
「ぎゃぁぁぁぁぁぁーーー」
「お嬢様っ!どうしました?」
「こ、これ...」
「これは二の腕...というか...えっと」
「な、何なの?」
「じ、上腕二頭筋ですね」
「え、じゃ、これは?」
「三角筋ですね」
「ええっ...これ」
「僧帽筋です」
「こここれも...」
「はい、腹直筋上部ですね。いやぁ〜綺麗に6つに分かれてますねー」
「ううぅ、これは?」
「大腿四頭筋です」
「すぅ〜はぁ〜...で、では、こ、これは?」
「はい!大胸筋です。お胸まで...ぷぷっ。いやーお嬢様もマッチョですねー」
「やかましいわっ!」
一日で筋肉がつくのかは疑問だが...異世界あるあるだな。
「ないわっ!。くそ」
ーーーーーー
しばらくしたある日、ディアナのドレッサーにそれは置かれていた。
『第38回マッチョ競技会「女子の部」の書類審査の結果、ディアナ・シュナイダー様 「合格」です。エントリーNo.3です。集合時間に遅れないようにお願い致します』
「なんじゃこれぇぇーーー」
「あ、お嬢様。エントリーしておきましたよ」
「てめーかぁぁーーー」
ーーーーーー
「ねぇ、マジでこんな格好で出るの?」
「マジです。ささ、ここまで来たらちゃんとしましょう」
「これ...ビキニ...より布の面積小さくない?てかシノブ!てめーが嵌めたんだろーがー」
「コラコラ、侯爵令嬢がそんな汚い言葉、使ってはいけません。もうすぐ出番ですからね」
「ぐぬぬ」
『皆様お待たせしましたぁ。第38回マッチョ競技会、女子の部。今回のエントリーはなんと!過去最多!!158名です〜ぱちぱちぱち。それではエントリーNo.1から5番の方はステージへおねがいします』
「ささ、お嬢様。出番ですよ」
「ううっ。恥ずかし過ぎる」
『おおお、皆様。麗しの美女達。しっかりと目に焼き付けてくださぁーい。では、まずはリラックスポーズでーす。さぁ〜フロントからぁ、サイド右〜バックからぁサイド左。そしてフロントに戻ります』
会場は熱狂に包まれた。
『ではぁ〜メインイベントぉ「フロントダブルバイセップス」からのぉ〜「サイドチェスト!」...さ〜てキメのポーズはぁ〜「モストマスキュラー」だぁぁぁぁっ!』
こうして、第38回マッチョ競技会、女子の部は大成功に終わった。
「ううう〜」
まぁ一人、微妙なのも居るが、問題ない。
「やかましいわっ!!」
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その後、ディアナはアルト商会に正式採用され、メイドのシノブと共に、没落したヴォルフ伯爵の代わりにナイス商会を立て直し、新しくミスリル部門を設立。アルト商会はもちろん、シュヴァルツ子爵家(カールに無理矢理彼女にされそうになったヘレナの実家)にも協力を依頼して、アルディア山脈のミスリル鉱脈を開発し、アルト商会は多大な利益によって、国内最大手の商会となった。
ある日...
「お嬢様ぁ〜どこへ行くのですかぁ?」
「ん?アレクシスのとこ。細マッチョ成分補給よ」
「そうですか」
これはいつもの事、変わらない日常であった。
部屋の片隅にちょこんと置かれた謎の置き物には、こう記されていた。
【第38回マッチョ競技会 女子の部 ディアナ・シュナイダー 優勝】
おわり
最後まで拙作にお付き合い頂き、ありがとうございました。