第2話
コンコン
「入れ」
「お父様、ディアナです」
「おや、珍しいな。可愛いディアがここに来るとは」
お父様はだらしなくデレデレとした顔になりました。親バカです。末期です。
「お父様にお伝えしなければならない事があります」
「何かな?」
「申し訳ありません。カール様に婚約を破棄されました」
お父様は急にドン!と立ち上がり「何だと!」と怒鳴りました。
「それで、理由は」
明らかに怒り狂ってます。怖いです。
「何でも私の身体が貧相で、シュヴァルツ子爵家のヘレナ様に真実の愛とやらを見つけた。らしいです」
「...............」
お父様、怖いです。
「そうか...分かった」
「ご期待に添えず申し訳ありませんでした」
「何を言っているんだ、ディアは悪くない」
「しかし鉱山や鉄鋼部門の経営が...」
「ディアはそんなこと気にしなくていい。あっ」
「どうしたのですか?お父様」
「いや、その...」
珍しくお父様は歯切れが悪いですね、どうしたのだろう?
「ディアすまなかった」
「え?何の事でしょう?」
「いや、カールが馬鹿だとは思っていたが、ここまでとは知らなかった。無理に婚約させて申し訳無い。私の一生の不覚だ」
「いやいや、頭を上げて下さい。私も鉱山で色々実験とか出来るかも...という打算がありましたので」
「そう言ってくれるとありがたい。本当にすまなかった」
私の実益を兼ねた趣味はポーション作り。この世界には魔法が存在するのです。
既に何種類かのポーションがアルト商会で販売しており、それは私が開発したもので、他の商会のポーションより品質が良い人気商品なのです。
「それで、婚約破棄の手続きをお願いしたいのですが」
「それはこちらでするから安心しなさい。ヴォルフ伯爵め、恩を仇で返すとは許さん」
「どうされるのですか?」
「完膚なきまでに叩き潰す」
あちゃーマジだ。マジ怒り炸裂だ。お父様を怒らせたらもう終わりね。
ブチブチと服が破けるかと思ったわ。お父様もかなりのマッチョだからなぁ。
「あ、でもヘレナ様。シュヴァルツ子爵令嬢は、仕方なく付き合わされているだけと思います」
「分かっている。シュヴァルツ子爵家はナイス商会の下請けだからな」
ナイス商会、商会長のヴォルフ伯爵は小物感満載の人物で、下には威張り散らすのに上には手のひらを返す、という事をするので、上の立場からすると、本性が分かりにくいのでした。
その点についてはあのバカ息子は分かりやすいんだけどね。
恐らくヘレナ様も馬鹿カールに無理無理ってとこね。
「それでディアはこれからどうするんだ?」
「冒険者になろうかと思います」
「ええっ!」
「あ、いえ、それで生計を立てるというわけではなくて、ポーションの材料を自分で調達したいと思いまして...それにメイドのシノブも連れて行こうかと」
「なるほど...ん〜でもな...」
「ご心配は分かります。しかし、自分で材料も調達できないようなポーション職人になりたくありません」
「決意は固いようだな。まぁシノブもいれば...分かった許可しよう。しかし、十分に注意して無理するんじゃないぞ」
「分かりました。ありがとうございます。お父様」
よっしゃぁぁ。言質とったぞー。うるうると見つめれば。うふふ、チョロい。




