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宜しくお願いします。
今日は三者面談の為午後は学校が休みだ。那智と樹は家へと帰っていたが、二人とも遅くまでゲームをしていたので欠伸がとまらない。
「眠い~。帰ったら寝よっかな」
樹は欠伸をしたまま何ともなしに反対側の道路を見た。そして雑踏の中にまぎれている何かを見てしまった。
それは普通に歩いている。だが、姿がおかしい。全身茶色の毛で覆われていて、顔と口が大きく鼻がない。二足歩行をしているがあきらかにおかしい。だけれどもすれ違う人達はそれを目にしているものの、あまり反応もせずに歩いている。樹は自分の目がおかしいのかと思い那智に聞いてみた。
「那智、あれ見えるよな」
那智は樹が指さす方を見て・・すぐさま反応できなかった。全身の毛が逆立ち鳥肌がいっきに立ち、手が震え出した。
自分の中の何かが逃げろと言っている。だが、なぜ歩いている人は逃げないのだろうか?平和すぎて危険察知が落ちているのかもしれない。那智の声は震えていた。
「何だよ・・あれ・・」
「着ぐるみで中に人が入っているとかじゃないよな」
「違う!ば・・ば・・・ば・・けもの・・。
に・・逃げないと・・・」
那智は後ずさったが足が思うように動かずにこけそうになったところを樹に支えられた。
「大丈夫か?」
「樹、逃げよう・・早く!」
「だな」
化け物から視線をそらし、10歩ほど進んだところで、車のブレーキ音と爆音が聞こえてきた。振り向くと化け物が車道の真ん中にいて、化け物の近くにある車は上から何かが落ちてきたかのように潰れていた。瞬間、喧噪が訪れた。それは長く感じたか数秒だっただろう。そして喧噪を破るかのように誰かが叫んだ。
「キャー」
それを合図かのように人々が逃げ出した。化け物の手からは蔓のようなものが出ていて、それが鞭のように近くにいた人達に振り回わされている。鞭があたったところは皮膚がさけ肉が見え、血がダラダラと流れていた。その人達は皆倒れ苦しんでいる。
潰れた車からは血まみれの男が道路に転がり落ちて痙攣をしていたが、ピタリと動きがとまりこときれた様にみえた。そしてそれは足の裏を地面につけ手を使わずに立ち上がった。
目は虚ろだ。
「ギャーーー」
甲高い声を上げてからそれは化け物の傍に近づいた。化け物が
「ギャギャギャ」
と言うと、それは逃げている人達を襲い出した。
那智は恐怖で足が止まり地面に縫い付けられたかの様に動かなくなってしまった。そして那智に化け物の蔓が伸びてきた。
「那智!!!」
樹が那智を蔓から逃す為に、那智を押すと蔓が樹の右腕をかすめた。腕からは血がポタポタと地面に落ちる。
「那智!!しっかりしろ!逃げるぞ!!」
「樹・・ごめ・・」
「気にするな。行くぞ!!」
「う『パラリロパラリロパラリロリ』ん」
効果音が大音量で流れだした。樹も
「何だこの変な音」
と言っている。
「昔の不良がバイクを乗っている時の音が聞こえた」
「えっ、、俺は『UFO』て言った後に音楽が流れだしたぞ」
「じゃなくて逃げるぞ」
前を見ずに走り出した為、人にぶつかってしまった。ぶつかられた人は地面に転がった。走っている状態でピクリとも動かない。
那智は周りを見回した。化け物は蔓を伸ばしたままで、ほとんどの人達は時が止まったかのように動かない。だか数人は動いているようだ。
「止まってる」
「なんだ、これ」
すると那智の目の前に綺麗な女性が現れ、満面の笑みで
『おめでとうございます。あなたは選ばれました。それでは新しい職業をお渡しします』
ジャラララララ