夫VS妻 1
本日4話目です
10話まで投稿する予定です
第三者視点で書いていますが、香織→武尊→香織メインです
家に帰る途中で武尊を見つけた香織は、声を掛けようと近付いて足を止めた。
桜を見詰める武尊の表情が変わったからだ。
『桜の花ではなく、根元を視ている?』
桜の幹の下辺りを見詰める武尊の眼が熱を孕んでいる様に見えた。
あの表情には見覚えがある。武尊が欲情している時の顔だ。
暫くして慌てた様子で家に帰る武尊に声を掛けそびれて茫然と見送ってしまった。
一体何を見ていたのだろうと武尊の立っていた辺りに行ってみたが、特に変わった物は見当たらなかった。
家に着いて、音を立てない様に注意して玄関を開けた。
バスルームからお湯を張る音がしている。
近付いて扉を開けた香織の眼に、猛ったアレに手をかけている武尊の姿が映った。
「……ただいま?」
我ながら間抜けな挨拶だな、と香織は思った。
▼△▼△▼
先走りのぬめりを全体に纏わせようと手を掛けた時に風呂場の扉が開いた。
そこには魂が抜け落ちた様な憮然とした表情の妻が立っていた。
「……ただいま?」
そう言われて何と返せばよいのか武尊は混乱した。
寒いので取り敢えず早く扉を閉めて欲しかった。
「お、おかえ…り? 直ぐに済ませるから、寒いので扉を閉めてくれないかな?」
間抜けな答えだが、これが本音だ。
兎に角、続きがしたいので早く出ていって欲しかった。私は視られて興奮する趣味はないのだから。
待っていても扉を閉めようとしない香織に苛ついて自分で扉を閉めにいった。
立ち尽くす香織の目の前で扉を閉めて鍵を掛けた。
結果的に香織を締め出した事になったと気が付いたのは欲を吐き出して落ち着いた後だった。
急いで身体を洗い流して、湯船には浸からずに風呂場から出た。
香織はリビングに電気も点けずに座っていた。
怒らせてしまったかと思いながら明かりを点けた。
「遅くなってごめん。直ぐご飯の仕度をするから、もう少し待ってて。あ、先に風呂に入っておいでよ。上がるまでには用意しておくから」
キッチンに向かいながら香織に声を掛けた。
▲▽▲▽▲
武尊は私の目の前で扉を閉めて鍵を掛けた。
間を置かず武尊が自慰をしている息遣いが聴こえてきた。
どういう事なのか理解できずに混乱した頭で、ふらふらとリビングに移動してソファーに腰掛けた。
明かりを点けることも忘れて座っていたが、何が起こっているのか理解できなかった。
暫くして武尊がリビングに入ってきて明かりを点けた。
「遅くなってごめん。直ぐご飯の仕度をするから、もう少し待ってて。あ、先に風呂に入っておいでよ。上がるまでには用意しておくから」
ご飯の仕度?謝るのは其処なの?
先に風呂に入ってこい?そんな気遣いはいらない。
武尊が何を言っているのか解らなかった。
考える事を放棄した私は取り敢えず風呂に浸かる事にした。
バスルームの扉を開けると、ほんのりと雄の匂いがした。
武尊はここで吐精したのだと実感してしまった。
身体を洗って湯船に浸かると涙が溢れてきた。
武尊にとって私は自慰よりも価値のない女なのだ。
本日分は9時に投稿終了の予定です
9時に纏めて読んでいただいても長い話ではないです