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櫻の樹の下に埋まっているのは  作者: 朝倉メイ
第三章 歩み寄り
24/25

仮面夫婦

『更新されていません』の赤字が出てからも書いては消しで時間が経ってしまいました


いろいろ迷って、結末は変えませんが其処に至る過程を修正する事にしました


読んでいただけると嬉しいです

 話終えて項垂れている武尊の表情に心が少しだけ痛んだ。 武尊を支配したいと思っているけど愛情が全く無いのではないから。


 後悔しても過去をやり直す事は絶対に出来ない、そんな事は解かりきっている。()れでも何時(いつ)の時代でも人間(ひと)は繰り返し考えてしまう。

――あの時こうしていれば、あの時あんな事を言わなければ――…


 過ぎた事をどれだけ後悔しても時間は絶対に巻き戻る事は無いし、立ち止まって感傷に浸っていても確実に時間は流れて行く。

だから大抵の人は失った恋を昇華して新しい恋を探すのだろう。 傷口は(やが)瘡蓋(かさぶた)になり、瘡蓋が剥がれる頃には痛みも忘れていく。 瘡蓋にならない様な大怪我は死ぬしかないのだから、生きているなら何時かは怪我は治る。


 其れでも私や武尊の様に失った恋にしがみついて前に進めない愚か者もいる。

私たち夫婦はお互いに上手く仮面を被っていたので、今まで気付かずにいたのだろう。

「似た者夫婦ってわけね」


 思わず口を付いて出た言葉に武尊は顔を上げて探る様に私を見詰め、私の言葉の意味を理解したのか得心した顔で訊ねてきた。

「似た者夫婦、か。そう言えば香織は昨日『私にだって愛する人はいる』って言ってたね」


 何だ、思っていたより冷静だったのね。ちゃんと私の言ったコトを聞いてたんだ。

「興奮していたからよく覚えていないんだけど、確か『愛する人が自分の事を愛してくれるのがどれだけ幸運な事か』だったよね。 香織の愛する人は他に好きな女がいたの?」



▼△▼△▼


 香織の『似た者夫婦』の言葉の意味は過去に囚われて前に進めない者同士と謂う意味だろう。

彼女の囚われている過去とはどんな物なのか少し気になる。

「香織の愛する人は他に好きな女がいたの?」

私の質問に香織は一瞬驚いた顔をした後、眉を潜めながら答えた。

「いた、のではなく現在進行形でいるんじゃないかしら。 あの(ひと)も貴方と同じよ、死んでしまった妻が忘れられないのよ」


 『あの(ひと)』と口にした時の香織の顔の(なまめ)かしさに彼女の想いを感じる。

「愛している、なんて綺麗な感情じゃない。 側にいたら殺してしまうかもしれない、押し倒してぐちゃぐちゃに犯してやりたい、でもあの男だけには抱かれたくない『神聖な不可侵領域』かな」


 泣きそうな顔で想いを語る妻は『女の顔』をしている。 こんな香織は初めて見た。

「犯したいけど抱かれたくない、か。 そんな男がいるのになんで私と結婚したの?」

「さっき言ったじゃない、側にいたら殺してしまうかもって。 結婚したら会えない理由になるでしょう? 武尊こそ私を愛していないし、子どもはいらないのに何故結婚したの?」



▲▽▲▽▲


 あぁ、こんな話をするつもりじゃなかったのに。 武尊がどんどん冷静になっていくのが判る。

でも、お互いに本音で話し合うのも案外気持ち良いものなのね。

 今日はもう武尊を抱くのは諦めるしかないわね。

其れよりも何故私と結婚したのか、武尊の本音を聞いてみたい。


 気分転換に珈琲を淹れようと思い、立ち上がったが武尊に止められた。

「私が淹れてくるから香織は座ってて。 新しい紅茶があったよね、珈琲よりもあれを開けよう」

そう言って軽く微笑む武尊の顔は結婚した当初によく見た私を気遣う表情だ。

「考えを纏めてくるから、此れからの事も含めてゆっくりと話そう」

 

 そうね、(たま)にはこんな日があっても良いのかもしれないわね。



 お互いの仮面が剥がれてしまったので、もう一度仮面を被り直すか、新しい関係を再構築していくか。

 それとも離婚するのか――…

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