表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
櫻の樹の下に埋まっているのは  作者: 朝倉メイ
第三章 歩み寄り
18/25

妻の逆襲

R18版に合わせた物と差し替えています

内容は殆ど変わってはいません

 香織の挑発に乗ってはいけないと頭では解っている。解ってはいるのだが茉莉への冒涜は絶対に許す事は出来ない。


 そう考えている間にも香織は話を続けている。

「何があったとしても、自殺するなんて卑怯よ。生きているのが辛いから逃げたんでしょう?」


 私の事は何と言われても構わない、だが茉莉を卑怯と言われて許せる筈がない。

「茉莉はっ! 茉莉は卑怯なんかじゃないっ! 私の子どもの可能性の有る()堕胎(ころ)す事が出来ないからっ!」

そうだ、茉莉は自分を強姦(レイプ)した憎い男の子どもは絶対に産みたくなくて、でも私の子どもかも知れないから堕胎(おろ)せなくて――…!


 私の言葉に表情を変える事もなく、香織は冷めた眼で此方を見下ろしている。

「でも自殺したのなら結局は武尊の子どもの可能性のある児も死んじゃったのよね? ()れって最悪の選択じゃない」

「ッ! そ、れはッ、、」


 香織は私と距離を取ったまま淡々と話を続ける。

香織の事だから何か意図が有って(わざ)と私を煽っているのは解っているのだが冷静にはなれない。

「愛する人を失った事もない香織に一体何が解るんだっ!?」

「あら、武尊は『愛する人を失った』のは自分だけだと思っているの? ばっかじゃない、世の中の大半の人は何らかの形で愛する人を失っているのよ。私だって――」


▲▽▲▽▲


 愛する人を失ってもいない、か……そんな筈ないじゃない。自分だけが『愛する人』がいるとでも思っているのかしら?

「あら、武尊は『愛する人を失った』のは自分だけだと思っているの? ばっかじゃない、世の中の大半の人は何らかの形で愛する人を失っているのよ。私だって心から愛する人はいるわよ。なのにこうして武尊と結婚しているんだから、此れがどういう意味か解るわよね?」


 私にだって愛する人はいる、彼の眼に映る女性を全員殺してでも手に入れたい(ひと)が。

だけど仮令(たとえ)この世に残る人類が『貴男』と私の二人だけになっても、私は彼に選ばれる事は無いだろう。

 彼の眼に私が『恋愛対象(じょせい)』として映る事は無かったのだから。


 一時期であっても愛する人に選ばれ、愛し合う事が出来た武尊は幸せだと思うし、妬ましいとも思う。


 考えていたら段々腹が立ってきた。武尊は自分だけが悲劇の主人公だとでも思っているのでしょうね。

「愛する人が自分の事を愛してくれる、それがどれだけ幸運な事か武尊には解らないでしょうね。目の前で他の女の手を取る(ひと)を見ているしか出来ない、殺してでも手に入れたいと思う気持ちなんて武尊には理解出来ないわよね?」


 あのまま友人として『貴男』の側にいる事も出来ただろう。

だけど、そうしていたら私はきっと狂っていた。貴男に近寄る女を殺していたかも知れない、私を選んでくれない『貴男』を殺していたかも知れない。

だって私は実際に、貴男の妻の死を願ってしまった女なのだから。


 でも()れだけじゃない、私が腹を立てているのは武尊が『自殺』した彼女を神聖視している事だ。


 自殺者を悲劇のヒロインの様に扱う何て許せない、自殺は周りの人の心も殺す立派な犯罪だ。

自分が楽に成りたいからと死んでしまうなんて、卑怯な行為だ。

「世の中には病気で、苦しくて苦しくて死んだ方がましだと云う人もいる。だけどそれでも愛する人の為に、家族や子どもを残しては死ねないと泣きながら闘っている人も沢山いるのよ! 自殺するなら、命が要らないのなら代わって欲しいって泣きながら死んでいった人もいたわよっ! 自殺するなんて卑怯よ、絶対に許せないっ!!」

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ