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櫻の樹の下に埋まっているのは  作者: 朝倉メイ
第三章 歩み寄り
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愛を告げる夫

(たける)が愛を告げる相手は妻ではありません

 私は目の前にいる武尊の口から出た言葉の意味を理解できずにいた。

 今まで一度も聞いた事の無いような冷たい声で、『私が殺したんだ』武尊はそう言ったのよね。

「殺した?『妊娠したから死んだ』って言うのは病気か何かだったんでしょう?武尊が殺した訳じゃないわよね」

 武尊の過去の恋人が妊娠していたという事だけでも初耳なのに、亡くなっていたのか。だからあの時、美和ちゃんは教えてくれなかったのかしらね。


 結婚前に夫の実家に挨拶に行ったときに、義妹の美和ちゃんが武尊の卒業アルバムを見せながら中学高校の頃の話をしてくれた。

『まぁまぁモテていたけど彼女はいなかったよ』と言っていたが、それ以降の事は話してくれなかった。

不思議に思って尋ねると、大学から家を出ていたのでアルバムも無いからね、としか答えてくれなかった。


 武尊の顔を見ると何時(いつ)もの優し()()()顔で微笑っている。この胡散臭い笑顔は、彼が私を適当な言い訳で誤魔化す時の顔だ。

「そうだよ、って言って欲しいのかな?香織は本当の事が聞きたいのか聞きたくないのか、どっちなんだい?」

「本当の事を教えて欲しいに決まってる。武尊が何故子どもが欲しくないって言うのか、それが原因なんでしょう?」


 武尊は珈琲を一口飲んで私の方を見た。

「そうだな、茉莉が死んだのは妊娠したから。だけど病気なんかじゃない、自殺したんだ」

『自殺』という言葉を口にした武尊の顔は全ての感情が抜け落ちていた。

 ――無表情――胡散臭い笑顔でなく、苦しそうな顔でもなく、本当に何の感情も読み取れなかった。

「自殺……?妊娠したから自殺したって、何で…?まさか、武尊が堕ろせって言ったんじゃないよね」


 私がそう言った途端、武尊は憤怒の表情で怒鳴った。

「そんな訳ないだろうっ!!茉莉の子どもなら、例え私の子どもで無かったとしても愛したし、大切にしたさ!」


 例え私の子どもで無かったとしても?武尊の子どもじゃない可能性が有ったという事……?

これは私から尋ねて良い事ではないと解ってはいるが、物凄く気になる。


 何と言って聞けばいいのか判らず、俯いている武尊を黙って見ていた。

暫く沈黙が続いた後、武尊が大きく溜め息を吐いて顔を上げた。

「怒鳴ったりして悪かった、香織が悪いんじゃないって解ってはいるんだが……多分、茉莉も私の口から『堕ろせ』って言われると思っていたんだろうと考えると……」


 震える声で話していた武尊の声が詰まった。武尊の目から一筋の涙が零れた。

「…愛して、いるんだ……茉莉が居てくれれば、他には何も望まない…何が有っても、茉莉を愛している……そう伝えれば良かった。誰に何を言われても会いに行けば良かった、……指輪も、花束も無くっても、土下座してでも、茉莉を乞えば良かった」


 (たける)は妻の私に、他の女への愛を告げている。

そんな(わたし)にとっては残酷なシーンなのに、私は武尊の泣き顔を見ながら興奮していた。武尊のこんな表情を見るのは初めてだ。


 ――ああ、美しい……もっと泣かせたい……





香織の変態さが顕著になってしまいました

R18版の香織はもっと変態です

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