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櫻の樹の下に埋まっているのは  作者: 朝倉メイ
第三章 歩み寄り
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夫の過去を知りたい妻

 武尊との攻防戦に勝利した夜から一週間、私たちは何事もなかったかの様に過ごしていた。

義妹の美和ちゃんの妊娠については気になっているのだが聞けない雰囲気だった。 


 今日こそ武尊に美和ちゃんの妊娠の話を聞こうと思っていた時にタイミング良くお義母さんから電話があった。

 先の話だが、ゴールデンウィークに帰省するか等の話をした後で美和ちゃんの妊娠について尋ねてみた。

「武尊がその事を話したの?」

お義母さんの声は驚いた様子で何時もと違って歯切れが悪かった。

「武尊は子どもは嫌いじゃあないんだけど、妊婦を忌避しているから美和が無事出産するまでは地元には帰って来ないと思うわよ」

やっとそれだけ話してくれたのだが、それ以上は教えて貰えなかった。


 帰宅した武尊に話を聞くか迷っていたのだが、お義母さんからの電話について聞かれたので流れで聞いてみた。

「お義母様が、武尊は美和ちゃんが無事に出産するまでは帰省しないって仰っていたんだけど、理由は教えて貰えなかったの」


 ちっ、余計な事を、と武尊は呟いたが直ぐに何時もの笑顔に戻った。

「そうだね、美和の里帰り出産もあるし実家もバタバタしているだろうから当分は帰省しない方がいいだろうね」


 これ以上は聞くなと態度に出ていたが、やはり気になる。

怒らせても良いので今日は絶対に話をさせようと覚悟を決めた。

「武尊は子どもが嫌いなんじゃないのね。妊婦、いいえ妊娠が嫌なのね」


 私の話に答えずに台所に移動する武尊の後を追いかけて話を続ける。

「何でそんなに妊娠するのを嫌うの?だから子どもはいらな言っていってるのよね、だったら私にも理由(わけ)を聞く権利はあるわよね?」


 私の問いかけを無視して料理を始めた武尊だったが、台所から移動しない私の顔を見て大きな溜め息を吐いた。

「取り敢えず晩御飯作るから、話は後にして。食べ終わってからゆっくり話そう」


 食事が終わって食器を下げていると、武尊が珈琲を淹れる用意をしていた。

「珈琲は私が淹れるから、武尊は片付けをお願い」

明日は二人とも休みなので珈琲を飲みながら話をする事にした。


 リビングに珈琲を運んで、ソファーに腰掛けた。

「それで、武尊は何故そんなに妊娠が嫌なのか教えてちょうだい」

改めて質問した私に武尊は不愉快そうな顔を隠しもせずに話を始めた。

「それを聞いてどうするんだ?()の話を聞いて納得出来たら子どもの事は諦めてくれるのかい?」

「そんな事は聞いてみなくっちゃ判らないわよ。私を納得させる事が出来るの?」


 そう答えたが、武尊の話し方に違和感を覚えた。

武尊は何時もは『私』ではなく『僕』と言っていた筈だ。

「武尊、今『私』って言った?何時もは『僕』って言ってなかったっけ?」


 ああ、と言って武尊は口に右手を当てた。

「参ったな、以前は私って言っていたんだ。地が出ちゃったか」

そうか、武尊は私の前ではずっと演技をしていたのか。 

「まあいいや。それで妊娠が嫌だという話だが、確かにそうだよ。だって私の最愛は妊娠したせいで死んでしまったからね。私が殺したんだ」


 『私が殺したんだ』ぞっとする様な冷たい声で武尊はそう言った。

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