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櫻の樹の下に埋まっているのは  作者: 朝倉メイ
第二章 夫の過去
13/25

花弁の散った後の桜

同棲までの課程を変更しました

 土下座してまで茉莉の彼氏の座を掴んだ武尊の大学生活は正に順風満帆だった。

12年越しの恋が叶い浮かれた武尊は両親に『結婚を前提に交際を始めた女性と一緒に暮らしたい』と言い出したので、志望校に入学出来た嬉しさで頭が可怪しくなったのではないかと本気で心配されてしまった。


 弟の初恋拗らせを薄々気が付いていた兄の徹には『俺からの引っ越し祝い(コンドーム)は役に立っただろう?』と揶揄われたが反論は出来ない。


 武尊の両親は結婚は論外だと一蹴したが、同棲については条件付きで許してくれた。

『彼女の両親の許可を得る事、今より広い部屋に引っ越すなら差額分は自分で出す事、但しアルバイト等で単位を落とす事なく4年で卒業する事』

それらを守れば授業料と最初に決めた生活費は出してやろう、そう言って父は笑った。

茉莉の両親は認めないだろうと思っていたらしい。


 茉莉の両親は交際に関しては『大学生の交際に許可は要らないだろう』微笑っていたが、同棲はやはり許しては貰えなかった。


 それから週末だけ一緒に朝を迎える生活を一年半続けて、茉莉が二十歳になった時に漸く茉莉の父も諦めたらしく一緒に暮らす事を許してくれた。


 同棲を始めるにあたって『親の脛を噛っている間は結婚は認めないので必ず避妊はする様に』と両方の親からきつく言い渡された。

 

 双方の親の許可を得て、直ぐに大学の近くの1LDKに引っ越して二人の生活をスタートさせた。

家事は分担制ではなく当番制にしたが、一人暮らしをしていた武尊は苦にはならなかった。

「うーん、悔しいけど武尊の作った御飯の方が美味しいわね」

「そうかなぁ?二人で食べるから美味しいんじゃないかな。まだまだ茉莉には敵わないよ」


 実家は車で二時間かからない隣の県なので、長期の休み毎に帰省して家族との関係は良好だった。

武尊の妹は茉莉の事を『茉莉ねえ』と呼んで慕っていたし、茉莉の兄は『本当にこんな妹で良いのか?』と真顔で武尊に訊ねて茉莉を怒らせていた。


 お互いの家族にも認められたので武尊としては直ぐにでも結婚したかったのだが、二人が就職するまでは絶対に許さないと言われた。

「頑張って勉強して、少しでも良い所に就職するからな!」

「条件の良い所は勿論だけど、武尊の働き甲斐のある所じゃなくっちゃ駄目よ。二人で頑張りましょうね」


「結婚しても良い夫になるよ」

「良い夫にならなくても、武尊が良いの!武尊じゃなければ駄目なの」


 二人で生きる未来しか考えていなかった。

出会ってから15年以上経っても武尊は茉莉だけを愛していた。

茉莉もこのまま幸せになれると信じていた。大学4年の秋にあんな事件が起こるまでは――



 就職も内定した10月の半ば、茉莉は帰宅予定時間を大幅に過ぎて帰って来た。

玄関を閉めたとたんに泣き崩れる茉莉に慌てて駆け寄った武尊は自分の目が信じられなかった。


 乱れた服、痣だらけの身体が何を意味するのか……

「ま、茉莉……?誰がっ……、誰にやられたっ!」

武尊の問いに顔を上げた茉莉の目は焦点が合っていなかった。

「茉莉っ!俺が解るか?」


 抱き起こして声をかける武尊に茉莉はゆっくりと反応した。

「……たける?」

そう小さく答えた次の瞬間、茉莉は声にならない悲鳴をあげた。


 茉莉は恐怖と絶望で蒼白になった顔で武尊の腕の中から逃げようと藻掻(もが)いたが、やがて力尽きて気絶した。

意識の無い茉莉を勝手に医者に診せるのは躊躇(ためら)われたが、後から責められる事を覚悟の上で救急指定病院に連れて行った。


 診察中に気がついてパニックを起こし、鎮静剤を打たれて眠る茉莉の顔を見ながら武尊はこの後どうするべきか悩んだ。

 取り敢えずその夜は入院させて貰える事になり、茉莉の両親に電話で連絡した。

夜中にも関わらず車をとばして来た茉莉の父親にどう言う事なのかと言い募られたが、武尊にもさっぱり解らなかった。


 診察した医師に警察に届けるか聞かれたが、茉莉の両親は躊躇った。警察でのセカンドレイプを恐れたのだ。



R18版に合わせて改稿しました

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