妻の日常2
第一章の前日の話です
仕事に集中して12時過ぎていることに気が付かなかった。
「杉下主任、お昼過ぎていますよ」
隣の席の片山さんに言われて画面右下を見ると12:06とあった。
午前中で終わらせたかったんだけどな、そう思いながらデスク周りを片付けて立ち上がった。
今日は食堂に行く時間も惜しいので、通勤途中にサンドイッチを買ってきてあった。
コーヒーを淹れてきて自分の席で昼食を済ませてから資料の確認を続けていた。
「杉下君、ちゃんと休憩はとらないと駄目だよ」
直属の上司である甲斐部長に声をかけられて書類から顔を上げた。
「明日の打ち合わせの資料の最終確認をしておりましたので。昼食はきちんと取りました」
そう答えながら、空のコーヒーカップを見せて納得して貰った。
終業時間までに資料を揃え終えて、定時で帰宅できそうだなと嬉しくなった。
帰り支度を始めた所に仲薗係長と甲斐部長が会議室から帰ってきた。
「杉下主任、明日のサンライズ社との打ち合わせ、宜しく頼むよ」
部長が席の後ろを通り過ぎる時に声をかけて行った。
仲薗係長は私の後ろで立ち止まって話し始める。
「杉下君もそろそろ後任を育てないとね。急に子どもが出来たとか言われると困るからね」
係長は何時も余計な事ばかり言って来る。
「高齢出産はリスクが大きいだろう。少しでも早い方が良いと思うんだが、どうだね」
これ以上は聞きたくない、そう思った時に部長が顔を此方に向けた。
「仲薗係長、それはセクハラだよ?」
そう言って困った顔で私を見ながら話を続けた。
「済まないね。杉下君のプライベートに口を出したくはないんだが、隣の課で問題が起きたんだよ」
「問題ですか?」
そう聞き返した私に係長も慌てて言い訳の様に話し始めた。
「そうなんだよ、隣の課の女性社員が妊娠してね。それ事態は御目出度い事なんだがね。切迫流産で緊急入院してしまったんだ。引き継ぎも出来ない状態で大変らしいんだよ。だからね、杉下さんがそうなるとうちの課は困るからね……」
言い訳を続ける係長を覚めた目で見ながらこっそり溜め息を吐いた。次に言われる言葉は予測出来る。
「そろそろ子どもの事も考えて後輩に仕事を回すようにして、仕事をセーブしてはどうかね」
やはり言われた。もう耳に胼胝が出来そうだわ。そもそも家は子どもが出来るような事は一年以上もしていませんからね。
「私は今の所そういった予定は有りませんから」
苦笑いしながらそう答えたが、腸は煮え繰り返っている。
少し乱暴に立ち上がって、部長の方を向いて頭を下げた。
「それでは部長、お先に失礼します」
そう言って呆気にとられている係長を無視して部屋を出た。
次回からは週に1~2話投稿する予定です
異世界転生の方を終わらせる事を優先しますので
こちらはゆっくり書かせていただきます




