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平宰相〜北条嫡男物語〜  作者: 小山田小太郎
西堂丸の巻(1543年~)
7/117

西堂丸の陣立

 翌日の朝食から早速品揃えが変わっていた。玄米に焼き魚、煮豆、お漬物とお味噌汁の一汁三菜。忠貞は仕事が早い、これからも頼りにしよう。


 母上はご飯が固いと言ってご機嫌斜めだが、竹は噛むのが楽しいようでニコニコしている。松千代はあまり噛まずに飲み込んで喉に詰まらせたり、魚の小骨が歯の隙間に挟まったりと何かと騒々しい。


 慣れるまで時間がかかりそうだが、栄養バランスは格段に良くなっている。父上の怒りっぽいとこもビタミン不足解消で改善されるといいなと期待しておこう。


「西堂丸!早雲寺に行って参れ。忠貞や綱房に伝えてあるから準備している筈だ。先触れも出しておいた。」


 父上の言葉に母上が顔色を変える。


「殿!妾は入門の話は聞いておりませぬ。道中何が起こるかも分からないではありませんか!」


「案ずるな、先々入門することになるが、今回はただの見学じゃ。早雲寺で学んでいる子等の様子を見れば、西堂丸にも良い刺激となろう。忠貞もおるし、綱房と大学助を護衛に付ける。案じることはない」


 父上が母上を宥めながらも甘く言葉をかける。うん、朝っぱらからラブラブだよ。この調子ならまだまだ兄弟が増えそうだ。


 表に出ると島津忠貞、福島綱房、鈴木大学助が待っていた。


 綱房は馬廻衆として武勇を買われているが、見た目は中性的で大きな黒い目が印象的だ。笑うと白い歯から光が零れ出しそうな涼やかな風情、白馬に跨る姿は王子様のようだ。綱房には若衆3人、槍持ち、口取り、荷物持ちが付き従い、主従7人である。


 大学助は綱房とは正反対の、まるで野盗のような男だ。大学助も主従7人で若衆に大弓を持たせている。忠貞は鹿毛の馬に乗り主従5人。


 猪助に抱え上げられて栗毛の馬に乗せてもらう。馬の口取りが猪助で段蔵という中間が荷物持ちだ。主従合わせて総勢22名での移動となる。


 綱房が陣立ての確認を行う。


「先頭は(わたくし)殿(しんがり)は大学助殿にお願いいたします。若様は忠貞様と馬を並べてお進み下さい。いざという時は忠貞様が指揮を執り、忠貞様と大学助殿で若様の脇を固めて頂きます。」


「若様に拙者の弓の腕をお披露目したいものだ。野盗が襲ってこようが心配いりませんぞ。」


 まるでどこぞに出陣するかのようなやり取りである。


 早雲寺まで遠くはないし、安全な領内なので万一はないと思うが、大学助の言葉がフラグにならないかと心配になる。


 野盗でお披露目とならないように野鳥か野兎がいたら強弓をお披露目してもらおう。



 早雲寺のある箱根への道中、周りには田園風景が広がっている。丁度、田植えの時期で田植え唄を唄いながら田植えをしている様子だ。


 夢の記憶から違和感を覚える。そうだ、等間隔に並んでおらず雑然とした印象なのだ。


「忠貞、田植えは思い思いに植えるのではなく、間隔を等しくして網目のように植えると良いのではないか?風通しも良くなり、陽当りも良くなる。あのように雑然としていては苗が窮屈そうじゃ。」


「西堂丸様は苗の気持ちになっておいでですね。中々に面白いお考えと存じます。」


「害虫や雑草の駆除も整然としていた方が歩きやすいと思うのじゃ。民の為にもなろう。」


 微笑ましく見ていた忠貞が真剣な表情になる。


「作業がしやすくなれば民も喜びましょう。しかしながら、斬新なお考えを人は中々受け入れられぬものでございます。受け入れさせるには実績が必要となりましょう。」


「儂の試みを受け入れてくれる者はおらぬか?農業に関して考えていることが少しあるのじゃ。」


「ならば御本城様に掛け合って小田原の近くで西堂丸様用に田をお借りしましょう。私も明の農学書から民の為になるものはないか考えてみましょう。」


 忠貞の存在が心強い、夢の知識を活かせる場を提供してくれる。ありがたいことだ。

登場人物


鈴木大学助(?)馬廻衆弓大将。鈴木成脩の父。息子の成脩(?-1590)は弓大将で秀吉の小田原征伐の際に討死。

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