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平宰相〜北条嫡男物語〜  作者: 小山田小太郎
西堂丸の巻(1543年~)
5/117

北条五色備

 手習いを終えて、片付けを始めた忠貞に問い掛ける。


「北条家は周辺の大名とはどのような状態なのだ?」


 今川家や武田家のことはなんとなく分かるのだが、関東の争いは複雑で理解できていないのだ。


「武田家と北条家は小競り合いは有りますが、武田家は信濃方面に進出して大井氏や村上氏と戦っています。武田家と今川家が婚姻同盟を結んでおり、協力し合っているようです。」


武田は大丈夫そうだな。


「今川家は北条家と興国寺城辺りの河東地域を巡って争いを続けています。ただ、義元公が家督を継いでから、遠江や三河の国人衆を制御しきれていません。」


 今川には優勢といったところか。


「武蔵では扇谷上杉家を追い詰めておりますが、上野の山内上杉家も控えており一進一退。入間川を境に河越城が最前線となっています。」


最前線はこちらだな。


「古河公方足利家には御本城様の妹君が嫁いでおります。北条家に誼を持つ者が多く友好的な関係です。下総の千葉家にも御本城様の妹君が嫁いでおります。足利家と千葉家は共に小弓公方を滅ぼした間柄で、北条家にとっては大事な同盟者なのです。上総の国人衆を調略しながら安房の里見家と勢力争いをしているところでございます。」


「それほど多くの敵を一度に抱えても大丈夫なのか?」


「御本城様が一人で対処してる訳ではありませんから大丈夫です。五色備えという方面軍があります。」


忠貞の説明では要所の城に旗頭を置いているとのことだった。

今川家に対しては白備として笠原信為を旗頭に伊豆衆。

武田家に対しては黒備として多目元忠を旗頭に足軽衆と津久井衆。

里見家に対しては赤備として北条綱高を旗頭に小机衆と海賊衆。

上杉家に対しては黄備として北条綱成を旗頭に玉縄衆と河越衆。

古河公方家や千葉諸氏の抑えには青備として富永政直を旗頭に江戸衆が置かれている。


「まず方面軍で対処し小田原から増援を受けることになります。それぞれに譜代衆から軍監が付き旗頭を支えているのです。小田原には御本城様を本隊として前備の大道寺様、後備の松田様、遠山様と陣触れの際の体制が整備されております。」


 織田家の方面軍は有名だが北条家の五色備えもまた、方面軍制度だったのには驚いた。大きな勢力になると管轄を分けないと対処できないので、自然な流れなのかもしれないと納得した。


 庭に出ると弟妹達が遊んでいた。5歳になる松千代が駆け寄ってきた。いや、突っ込んできた!体当たりを何とか受け止める。


「兄上、木登りがしたい!」


「猪助は良いと言ったか?まだ早いと言われたら駄目だぞ。」


 まだ身体ができていないので許可は下りてない筈だ。遊びながらも厳しく躾されている。


 断られた松千代は蟻の行列を足で踏み潰して、非情な遊びをしてはいけないと忠貞に怒られている。


 4歳の妹、竹は1歳の藤菊丸を抱きしめて母上の真似事をしている、本人は抱き上げてるつもりなのだろうな。

 

 史実でも頼もしい兄弟達、気持ちが安らぐ時間になった。

登場人物


松千代(1538-1590)北条氏政

藤菊丸(1542-1590)北条氏照

竹(?)七曲殿、史実では北条氏繁室。名前は架空


五色備えの軍制度は氏康の子供達が旗頭を担うようになると解消されていきます。

氏照や氏邦は領国に対してかなり強い権限を持っていたようです。


織田家も子供達に強い権限を持たせている印象を受けます。柴田と羽柴に見られるように方面軍同士の関係は良くありません。信長だけであった方面軍を束ねる権限を信忠、北畠信雄、三好信孝に委譲する過程で本能寺の変を迎えたのではないか、羽柴軍の旗頭が将来的に秀勝(信長の子)になるのが規定路線なので、明智は秀勝(秀吉)の与力扱いに憤りを覚えたのかも、長宗我部の扱いに見られるように西国大名の申次で秀吉とは相容れない関係もあるかと思います。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 主役を北条家長男にした目の付け所が新しく良いと思います。 [気になる点] 忠貞が綱成や多目氏を呼び捨てにしている所、医師はそこまで偉い? [一言] 神奈川県民として北条家の活躍を楽しみにし…
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