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平宰相〜北条嫡男物語〜  作者: 小山田小太郎
西堂丸の巻(1543年~)
16/117

西堂丸の傅役

 数日後、父上の書斎に呼ばれ、部屋に入ると数人の男達が既に座っていた。


「西堂丸、其方の傅役を決めた。ここにいる者達が其方の傅役じゃ。見知った者もいると思うが、紹介しよう。」


 最初に紹介されたのは大道寺盛昌、譜代衆で傅役筆頭である。精悍な顔つきのいかにも武人とした面持ちだが、民政にも優れた文武両道の50代の男である。昨年まで為昌叔父の後見として玉縄城に詰めていたそうだ。為昌叔父が亡くなり、北条綱成が玉縄城主となると、息子の大道寺周勝に家督を譲り、隠居したのだそうだ。


「西堂丸様。お初にお目にかかります。御本城様から大事な御嫡男の傅役にとのお話を頂き、隠居の身ながらまかり越しました。」


「盛昌は早雲公の薫陶を受けたと聞く。宜しく頼むぞ。」


「西堂丸様は農地の改善に興味があると聞いております。早雲公も民の暮らしには心を砕いておりました。若様の民を慈しむ心を知れば、亡き早雲公もお喜びになることでしょう。」


 2人目は黒衣を纏った僧形の男で、頭部に火傷の痕がある恰幅のいい老人だった。


「大藤信基と申します。根来金石斎の方が通りがいいので金石斎とお呼び下さい。先日、孫から手紙がありましてな。西堂丸様が早雲寺で足軽の重要性を語っておったと喜んでおりました。孫に代わりお礼申し上げます。」


「金石斎は火薬に造詣が深いと聞く。宜しく頼むぞ。」


「西堂丸様、火薬の扱いは十分な注意が必要です。油断すると(それがし)のような頭になり申す。そうならないようにご指導致しましょう。」


 3人目は島津忠貞だった。正式に傅役として仕えてくれるとは心強い。


「御本城様より傅役の大役を仰せつかりました。これまでと同様、学問・教養の指導役としてもお仕えいたします。改めて宜しくお願いいたします。」


 傅役の最後は福島綱房だ。武芸の指導役と護衛を兼ねるとのことだ。


「早雲寺に御供をして西堂丸様の人柄に触れ、護衛役を志願いたしました。私が選ばれたことを大学助が大層悔しがっておりましたよ。」


 部屋にはもう一人、筋骨隆々の大男がいた。髭を蓄え大きな頭で鼻が高い。うん、これ絶対に伝説の風魔小太郎だよね。


「お初にお目にかかります。風間出羽守と申します。若様は幼いながらも大将の風格を備えていると妻が申しておりました。先日は屋敷を留守にしており、お会いできませんでしたが、本日お会いできてうれしゅうございます。」


「出羽守は忍びの者を束ねる者なのか?」


 出羽守は鋭い目になり、問い質すような表情になった。


「ほう、どこのどなたがそのようなことを若様のお耳に入れたのでございますか?」


 やばい、極秘事項に触れたらしい。地雷を踏んでしまったようだ。咄嗟にはったりをかます。


「逆に問うが、なぜ機密を隠し通せると思うのじゃ?」


 暫しの間、睨み合いが続いたが、先に表情を和らげたのは出羽守であった。


「成る程、若様は面白いですな。我が妻が気に入るのもよく解り申した。」


「出羽守、実はただの当てずっぽうなのじゃ。我が傅役を決める場に其方が居た理由を考えたのじゃ。儂を影ながら守るのが其方の役目ではないのか?」


「御慧眼、恐れ入ります。我等は風魔衆と申します。拙者は風魔衆の表の顔を担当しておるのです。」


 出羽守の話では風魔衆には小太郎という頭領がいて、その下に四人の組頭がいる。出羽守はその組頭の一人で北条家に直接仕え、主に防諜と要人護衛や治安維持、戦の際は攪乱を担当するそうだ。他の三人の組頭は様々な職業をして諜報を行っているそうだ。猪助と段蔵も出羽守の組下だと教えてくれた。夢の知識で知ってはいたが迂闊なことは言えないので驚いたふりをしておく。


「拙者に繋ぎを取りたい場合は猪助にお伝え下され。」


 よし、なんとか乗り切ったぞ。

登場人物


大道寺盛昌(1495-1556)興国寺六家。早雲公から盛の字を拝領。

根来金石斎(?-1552)大藤信基。足軽衆。氏綱に認められる。

風間出羽守(?)風魔の忍びか?息に雨宮主水正。

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