表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
平宰相〜北条嫡男物語〜  作者: 小山田小太郎
西堂丸の巻(1543年~)
10/117

忠貞の疑念

 side島津忠貞


 西堂丸様達が温泉から戻られた。明日に備えて英気を養ってきたようだ。


 最近、西堂丸様の成長が著しいのだが、何か様子がおかしい。無邪気な思い付きかと思わせながら、大人顔負けの深い考察に基づいた意見であったりするのだ。極めつけは鉄砲に対する過剰なまでの反応だ。


 10年前、明に留学した当時でさえ、鉄砲は倭寇集団の大頭領が僅かに所有していただけだ。帰国する際に知遇を得ていなければ、鉄砲の存在すら知らないところであった。


 小田原に来てからも数人にしか鉄砲の話をしていない。興味を持ったのは砲術方の金石斎くらいのもので、それでも西堂丸様程の反応ではなかった。


 西堂丸様は鉄砲の威力を【知っている】としか思えないような反応であった。なぜ知っている?どこで知ったのだ?疑念ばかりが膨らみ、恐怖すら感じる。一度腹を割って話をしなくてはならない。


 就寝の時間になり、西堂丸様が横になった。


「忠貞も横になれ、今宵は共に語りたいのじゃ。疑念があるのであろう?」


「これは迂闊でした。顔に出ておりましたか?」


 西堂丸様は意を決したような表情をされてから語りだした。西堂丸様が未来の世界を体験したかのような夢を見たこと。将来、畿内に鉄砲を主力とした大勢力が現れること。北条家がその勢力に滅ぼされること。


「嫡男が自家の滅亡を口にしてはならぬのじゃ。夢に見た知識を使ってでも滅亡を回避したい。忠貞!儂はまだ幼い!協力してはもらえぬか?」


 俄かには信じ難い話だったが、西堂丸様の必死の思いが伝わってきた。それは童子でありながら当主として悩み、当主としての覚悟を持った男の願いだと感じられた。ならば、こちらも覚悟を持って答えなければならない。


「承知致しました。西堂丸様のため、身命を賭してお仕え致します。先程のお話は私の胸に収めておきます。他言できる話ではありません。きっと八幡大菩薩様のご加護を賜ったのでしょう。」


 私の言葉に安心したのか、西堂丸様は静かに寝息を立て始めました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 一話が非常に短すぎ、話は面白いが評価できない。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ