〜プロローグ〜
「養育費の入金、確認できました。今までありがとう」
元妻からのメッセージが届いた。
元妻の元に居る娘も成人を迎えて、今回の支払いで養育費も最後になったのだ。
「織田信長より年上になってしまうな」
明日の誕生日で私も50歳になる。
新聞社に勤めて取材と原稿に追われる日々。出張も多く、家庭のことを妻に任せきりになってしまった。
その頃から夫婦の間ですれ違いが多くなり、別れを切り出された時は頷くことしかできなかった。
一人になって良かったこともある。持て余した時間を趣味の城郭巡りに費やせるようになったのだ。きっかけは戦国時代を題材にしたシミュレーションゲームなのだが、当時の経済、文化、風俗を調べる内にのめり込んでしまった。
「久々にやってみるか」
ゲーム画面を起動し、new gameを選択する。
「おっと、新武将作れるな」
以前クリアしたことで、オリジナル武将をプレイすることができるようになっていた。
「名前は北条氏親、1537年生まれ、血縁は北条氏康の子、パラはランダムだね。夭折してるから嫡男なのに登録が無いんだよね」
独り言を言いながらキャラメイクを進める。
「開始は1543年、決定っと」
顔のグラフィックはちょいと濃い感じにしよう。温泉好きのローマ人が出てくる映画の主人公っぽい顔を作り上げる。
【所属勢力は北条家の小田原城でよろしいですか?YES/NO】
【元服前ですがよろしいですか?YES/NO】
【幼名は西堂丸でよろしいですか?YES/NO】
立て続けにYESを選択していく。このゲームには元服前モードがあり、以前のシリーズで6歳の家康が無双して、不評だったので追加された仕様なのだ。
元服前は高名な武将から教えを受けたり、お寺や商家で鍛錬し特技を獲得したり、武将との交流を深めることはできるが、領地経営や参戦はできない。
【初期配下武将を選択して下さい】
身分が高いと最初から配下武将を設定できる。通常3人選択できるのだが、元服前モードの為1人だけしか選べないようだ。設定可能武将リストを順番に観ていくが、【諏訪部定勝】【鈴木大学】【外郎藤右衛門】【江川英吉】マイナー武将のオンパレードである。5人目に忍者武将を見つけた。情報収集能力に期待してこいつにしよう。
【配下武将は二曲輪猪助でよろしいですか?YES/NO】
最後の難易度を決める画面で手が止まった。
【モード選択は?easy/hard/real】
「リアルって何なんだよ。まあいいか、知らんけど」
realを選択した途端に眠気が襲ってきた。
薄れてゆく意識の中でディスプレイの文字を読み取る。
【プレイヤーの魂をダウンロード中】
勢いで書き始めました。
初投稿となりますので生暖かい感じで読んでいただけたらありがたいです。