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死神の鎌  作者: ASH
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夢(?)

深夜0時。一日中立ち込めていた厚い雲がようやく晴れはじめ、隠れていたきれいな満月が顔をのぞかせた。その光は先ほどまで暗闇に包まれていた住宅街を青白く染め上げる。


その住宅街のとある家の一部屋もまた、窓から差し込んだ月光によって照らされた。

開きっぱなしになった本や途中まで積まれて放置されている木製の積み木が、スポットライトに照らされたかのように浮かび上がる。


煌びやかなステージへと様変わりした部屋の中央とは真逆に、まだ暗いままの部屋の隅。

そこで、16歳の少年―(たすく)は膝を抱えて顔を埋めていた。


部屋の静寂と対照的に、佑の心の中では様々な感情が荒れ狂っていた。


不安。不快。期待。絶望。自責。怒り。殺意。諦念。懐古。恋慕。


1つ1つの感情が猛獣のように佑の脳内を駆けずり回り、引っ掻き、吠える。

終わりの見えない苦痛に佑はより強く顔を膝に押し付けるが、それを『意味がない』と嘲笑うかのように痛みはどんどん増していく。


そして佑の頭が破裂寸前になったとき。不意に佑は目の前に人の気配を感じた。

温かく、優しく、自分の苦しみを癒してくれる、そんな気配を。


無数の感情と無限に思われた痛みが、時間でも止められたかのようにピタリと収まる。

佑は即座に確信した。

目の前にいるであろう人物にすがれば、自分はこの地獄から解放される。もうこんなに辛い思いをしなくて済む。と。


バッと顔を上げる。


そこには誰もいなかった。


先ほどまであれほど強く感じていた雰囲気もまるで嘘のように掻き消えていた。


口をポカンとあけて数秒間月明かりの照らす虚空を眺めたあと、佑の中に一つの確信が生まれた。


『もうあの人(・・・)に会えない』という、どうしようもない確信が。


その確信は佑を深い絶望のどん底へと叩き落した。

絶望は他の感情を押しのけ、言葉となって佑の喉を震わせる。


「ああああ吾亜啞阿アああ”あ”あ”あ”あ”!!!」


叫び声に合わせて家が震え、地面が震え、世界が揺れる。

佑のいる場所だけ取り残し、世界が音を立てて崩壊していく。


そして全てが原型を留めなくなった時。佑はベットの上で目を覚ました。

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