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第二章 其の三

 

 旅立ちから約三週間。

 俺達、勇者一行は古都ロザリアに到着。

 ここに来るまで道中の数々のモンスターを倒した為、

 俺のレベルも15から21まで上昇。


 モンスターの魔石やドロップアイテムを冒険者ギルドで換金したり、

 冒険者ギルドの依頼を小まめに達成したので、

 所持金も十五万ラン(約十五万円)まで増えた。


 最初ラルレイア以外は、俺の好みで選んだ仲間だったが、

 ナタリアもアリシアも想像以上に優秀であった。

 

 ナタリアは賢者セージの名に恥じない攻撃、回復役の要となり、

 ここまでほぼピンチらしいピンチに遭遇する事もなかった。


 アリシアも同様に獅子奮迅の働きを見せた。

 漆黒の大剣を振り回し、モンスターを次々と斬り捨てた。


 そして闇属性攻撃と魔法に加え、吸収系の魔法も得意とし、

 モンスターから魔力を奪うだけでなく、奪った魔力を自分や仲間に

 分け与える事が出来たので、魔力の残量の心配がなかった。


 更に嬉しい誤算となったのはラルレイアことラルだ。

 見た目は幼女のラルレイアだが、その戦闘技術はベテランさながらだった。


 銀色に輝く魔法銃から、六属性の魔弾丸で的確に標的の弱点を狙い打ち、

 更には二種類の属性を持つ合成弾を使い、一撃ワンショット

 単独連携を成功させる離れ業を見せた。


 それに加えて、属性弾を味方に使えば付与魔法エンチャントと同様の

 効果があり、それを瞬時に的確に使い分けるから、大したものだ。


 最初は彼女を盟友に加える事に躊躇いを覚えていたが、

 今となっては彼女を選んで正解だったと思っている。


 小さくて可愛らしい彼女は、ナタリアやアリシアにも可愛がられ、

 「ラルちゃん」や「ラル」の愛称で呼ばれるようになった。

 俺もそれに習って、彼女を「ラル」と呼ぶようにした。


 そんなわけでここまでの旅は比較的順調だ。

 だがこれから先が問題だ。 そう俺達はこの古都ロザリアから

 港町エルベーユに渡り、そこから船で魔王が統治する魔大陸に渡航する予定だ。


 俺達は古都ロザリアの街を闊歩しながら、宿を探した。

 周囲には石造の建物が押し並び、街の広場の中央の噴水には、

 祈りを捧げる女神ソフィアの青銅の像がそびえている。


 天気は快晴で、空は抜けるように青く、うっすらとたなびく雲が、

 左から右へと流れてる。 広場を行き交う人々の雑踏。 

 近くの教会からは、正午を知らせる鐘の音が鳴り響いていた。


 うむ、アールハイト程ではないがこの古都もなかなか活気があるな。

 そして俺達は冒険者区にある宿屋街に入り、中規模の宿屋を探す。

 だが予想外に多くの宿屋の部屋が埋まっていた。


 それでも何とか予算と希望に合う宿屋を見つけた。

 日当たりはやや悪いが、贅沢は言えない状況だからな。


 男の俺が一人部屋。 女性陣三人で一部屋を借りた。

 やや非効率な気もするが、パーティ事情を考えたら、これが無難である。

 とりあえず前金で宿代を払い、俺が事情を問い質すと、宿屋の主人が――


「そりゃ港町エルベーユが魔王軍の襲撃を受けて、

 占領下に置かれた事が原因ですぜ。 なにせエルベーユは

 この中央大陸の海路を繋ぐ中心的都市だからね。

 故に国がエルベーユ奪還の為に多くの冒険者を募ったのさ」

「な、何っ!? エルベーユが魔王軍に襲撃されたのか!?」

「ええ、何でも王都から勇者とその盟友が旅立ったらしいので、

 先手を打つべく魔王軍が先に仕掛けたという話ですぜ」

「……」


 つまり俺達が原因か。

 魔王軍も打つ手が早いな。 しかし船が使えないのは困る。

 仕方ない、ここは周りと協力して、エルベーユ奪還に手を貸すか。


「船が使えないと困りますわね。 ユーリス様、どうします?」と、ナタリア。

「うーん、とはいえ他に魔大陸に渡る方法はないからな。

 ここは他の冒険者と協力して、エルベーユ奪還を目指そう」


 俺達は女性陣の部屋で今後の方針を話し合った。

 俺の意見にナタリアもアリシアもラルも同意してくれた。


「そうだね、船が使えないと旅にならないし、原因はあたしらだからね。

 このまま見て見ぬふりはできないわ」


 アリシアが胸の前で両腕を組みながら、そう言った。


「あたちもそう思う。 まず目の前の問題を解決する。

 だからあたちはお兄ちゃんの意見に賛成するよ」と、ラル。

「そうですね。 困っている人達を助けましょう」と、ナタリア。


 うむ、とりあえず全員同意してくれたようだな。

 しかし口では景気良い言葉を吐いたが、

 たった四人で魔王軍からエルベーユを奪還するのは、至難の業だ。


 ここは他の冒険者を捨石にするか。

 などと鬼畜な事を考えていたら――


 ガン、ガン、ガン、ガン、ガアン。

 と、街中で狂ったように鐘が激しく鳴らされた。


「こ、これは敵襲の合図っ!?」

「ま、まさかこのロザリアにも魔王軍が襲撃に来たの!?」

「どうやらそう見たいね。 表に出よう」

「魔法銃と魔弾丸の準備は万全。 いつでも戦えるよ」


 俺、ナタリア、アリシア。 それにラルが口々にそう言いながら

 戦闘態勢に入りながら、宿屋を出て街の広場へと向かった。

 その時だった。



『緊急事態発生! 緊急事態発生! 全冒険者に告ぐ!

 直ちに武装して、戦闘態勢で街の正門に集合せよっっ!!』



 街中に大音量のアナウンスが響く。

 恐らく冒険者ギルドの連中が、魔道具を使って音を拡大しているのであろう。

 俺達はお互いに顔を見合わせて、頷き、アナウンスに従い正門へと向かった。





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