現代版織姫
深夜、明かりも付けずに一人でいると世界に自分しかいないみたいで心細くなってしまうあの感情に名前をつけたい今日この頃です。
今日も六畳ほどの小さな部屋で明かりも付けずに布団の中に潜っている私の顔を画面の光がかすかに照らす。時々彼とのトーク画面をひらいて、とじて、ひらいて、またもどって。
何度も確かめたところで連絡は来ない。分かっている。何度も通話ボタンに指を伸ばしたが押す勇気はなかった。負担にはなりたくない。こうして寂しさに推し潰れそうなことを相手に吐き出すのも気が引ける。
切り替えて眠ろうと目を閉じても脳裏に浮かぶのは決まって彼のことばかり。
初めて家にお邪魔した時、ふたりの日々が始まったこと。
初めてのデートでとても緊張して上手く話せなかったこと。
笑うと楽しくて仕方ないって感じでクシャクシャになる顔。
喧嘩した時何をしてても無視されて不安で仕方なかったこと。
久しぶりにやっと会えた時強く抱きしめてくれたこと。
夜中に手を繋いで家までの道を散歩したこと。
食べたがってたら、そのあと何気なく作ってくれたオムライス。
私が作る料理を美味しそうにパクパク食べる姿。
少し意地悪で、でも愛されてるのが伝わる言葉たち。
私にしか見せないであろう彼のその表情たちはどれも愛しい思い出で、同じ時間を過ごせていたあの日々が恋しい。
当たり前に来るはずだった日常が、こんな形で奪われるとは思いもしなかった。
もう何日会えてないだろうか。私ばっかり好きみたい…。
でも離れているこの状況だからこそ、わかることもある。いかに大事にされていたか、いかにお互いを思いやって過ごしてきたのか。
そんなことを考えていると決まって会いたくなって、でも会えるわけないから思わず視界が歪む。
今頃君は何してるかな、今日はどんな一日だった?きっと君も代わり映えのしない毎日に嫌気が差してきた頃だろうね。
ああ、早く君がばかだなぁ、って笑う顔を見て安心したいなぁ…。
暗闇の中で彼女は一人ため息をつくばかりだ。まだ、「会いたい」「せめて連絡は取りたい」なんて言葉は口には出せないままで。
口に出すのは簡単だけれどはばかられる。そんなことってあると思うんです。