不器用な夜
物語には起承転結があって。
その「起」をいつも探している。
少しでいいから、
何かが欲しいと。
非日常が、
あったらなって。
線のように細い月が
少し暗めに、
だが確かにそこにいると主張する。
色褪せたグレーの上着を
少し雑に羽織りながら
夜の市街地にでた。
行く所も、
行きたい所もなく。
楽しく無さげに歩いていた。
片方だけの草履を見つけ
そっと一言
お前も1人で頑張ってんだなって
そんな言葉が頭をよぎる。
うざい日照りも
けたたましい車の音も。
今は名残惜しい。
1日の影を底に落とす。
目に入ったBARに入って
飲んだことも無い酒を飲む。
タバコの煙と酔いが
心地よく体を包み込む。
深夜に家路を1歩ずつ踏みしめる。
それも実に初めてで。
退屈だった一日に、
少し大人ぶった思い出を刻む。
美味しいとも感じない酒もタバコも。
いつか、もっと大人になった時には
美味しくなるのだろうか。
それとも。
まだ美味しくないままでいられるのだろうか。
1人の夜は心がザワついて。
凄く雄弁になる。
ベランダから空を見上げて。
感傷に浸る。
大人ぶってみたから。
今日は。
寝るまで大人になりきってみることにする。