『新年につきパウンドケーキ一切れプラス! 新年のオススメは善哉セット! 喫茶チャント』
コーヒーの飲み過ぎには気をつけよう!
怪人”犬公方ツナー”(イヌクボウツナー)は、『園田整骨院』の「園田 正俊」さんから、ゴン太くん(柴犬 5才 ♂)のリードを受け取り、予定時間まで商店街を探索している。
「ゴン太くんは元気だねえ」
うちのさちこ(ポメラニアン 3才 ♀)も、もう少し外に出てくれれば良いんだけどねえ……。
冬に弱い飼い犬が、散歩に「行かない」ストレスを屋内で発散する姿を思い浮かべる怪人”犬公方ツナー”である。
柴犬は日本原産のイヌであり、日本の気候に適応しているので元気なのは当然である。
まあポメラニアンも結構寒い地方の出身のはずなのだが、小型犬は体温保持が難しいし、愛玩犬として長年愛されてきたため、体質も変化してきたのだろうか。
「そもそも座敷犬だしなあ…あ、お子様、何かご用ですか? おっと、こうみえても怪人である”犬公方ツナー”は、お子様のパンチ一発ではヤラレはしないぞー! フフフ。だれも知らない弱点のシッポを握りしめられない限り、怪人”犬公方ツナー”が子供に負けるようなことはないのだー!」
と言いながら、お子様の目の前でシッポをふりフリしてみせるサービス精神旺盛な怪人”犬公方ツナー”である。
その挑発に俄然ファイトを燃やした元気なお子様「一番星くん」(その名前で大丈夫ですかお母さん)が、勢い良くシッポを掴む寸前、怪人”犬公方ツナー”は自分のシッポをサッと引っ張り彼の手を回避するのだ!
一番星くんがシッポを掴み損ねる! 「あーっ!」
ゴン太くんが目の前で揺れるシッポに噛み付く! 「アーッ!!」
「グワァ---! ご、ゴン太くん!? まさかの裏切り!? フッ、フフフ。ま、まさかゴン太くんを使って弱点を突くとは、凄い策略だ……。一番星くん、僕を倒したのだから、君には『怪人”一番星”』の称号を授けましょう、もし組織に来てくれたら改造して怪人に…え、怪人とか嫌? あー……仕方ないですね、代わりにこの怪人”犬公方ツナー”大判ステッカーをプレゼントしましょう! 冷蔵庫とかに貼ると、剥がしにくくて間違いなくあとが残る素材を使っています!!」
「やったーー!」
嬉しそうな一番星くん。
「……」
凄く迷惑そうなお母さまの視線。
だが、悪の怪人たる”犬公方ツナー”はそのぐらいではビクともしない!
「(すみません本当はちゃんとキレイに剥がれますので…)」
と小声で告げると、シッポを噛みっぱなしのゴン太くんを引き連れて、颯爽とご当地ヒーロー”ハチカヅキン”の待ち受けるステージへ向かうのだ!
ステージ上のコタツでは、駅前商店街にある2つ目の喫茶店『喫茶チャント』より提供していただいた「自慢のブレンドコーヒーHOT(ポット入り:800円)」を、ブラックが飲めない怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)に、無理やり素のまま飲ませるヒーロー”ハチカヅキン”の姿があった。
「グゥワァアアアアアアアアアアアアアアア!!」
半分ほど飲んだだけであえなく轟沈する、哀れな怪人”犬王モノー”であった。
ブラックを飲めない人間に無理やり飲ませるとはなんという暴虐!
……ぜひ見習いたいと思う。
「フッフッフ、上司である怪人”犬王モノー”は轟沈しましたが、私にブラックコーヒーは通じません。そしてこの怪人スーツはちょっと寒いので、ホットコーヒーなどは願ったり叶ったり!」
怪人”犬公方ツナー”は、怪人スーツである戦闘用裃の防寒性に疑問をていしながら、まだたっぷりコーヒーの入っていそうなポットからホットコーヒーを要求する!
ホットコーヒーガハイリマシタァアアア!
ヒーロー”ハチカヅキン”が新しいカップに温かいコーヒーを入れて良い笑顔で提供する掛け声が耳に響いた。
「さあ、冷めないうちに飲むといいぞ!」
ニコヤカにコーヒーを勧めるヒーロー”ハチカヅキン”。
ブラックが飲めるのならば、次は熱さで攻めようとでもいうのか。
しかし猫舌ではない怪人”犬公方ツナー”は、最近のポットの保温技術の高さに驚きながらも、結構熱いブレンドコーヒーを一気に美味しくいただくのだ!
「アツゥイ! ですがこれは結構なお手前、流石は喫茶チャントの自慢のブレンドコーヒー!!」
「ハッハッハ! 一気にいただくとは、よほど寒かったようだな怪人”犬公方ツナー”!! ではもう一杯いかがかな!!」
オカワリイカガデスカァアア!
ヒーロー”ハチカヅキン”が空になったカップに温かいコーヒーを入れて良い笑顔で提供する掛け声が耳に響く!
変わらぬ笑顔が眩しい。
「……み、ミルクを頂けますか?」
「ハイ、ヨロコンデー!」
流石に2杯目もブラックだと胃に悪いと感じた怪人”犬公方ツナー”は、ヒーロー”ハチカヅキン”から威勢良く手渡されたミルクポーション(5個)のうち1つを開けコーヒーと一緒に喉へ流し込む!
「ミルクとの相性もやはり抜群! こうなるとお茶受けに喫茶チャントのパウンドケーキがほs……」
オカワリオマタセシャッシタァアア!!
みたびヒーロー”ハチカヅキン”の声が会場に轟くと、空のカップは地獄のように熱く黒々とした液体で満たされた!
「(*´∀`)」
ヒーロー”ハチカヅキン”が、柔らかい笑顔で目一杯注ぎ込んだコーヒーは、表面張力でパッツンパッツンだ!
だがしかし、注ぎ込んだ時のポットの傾き具合から見て、もはやこれがご当地ヒーロー”ハチカヅキン”最後のコーヒー攻勢に違いない!
「グ、グゥオオオオ!? ヒーロー”ハチカヅキン”!! よもや寒さに震える怪人に、ホットコーヒーで波状攻撃とは策士過ぎるんではないでしょうか!? だ、だが、この怪人”犬公方ツナー”! ホットコーヒーの3杯目までは飲み干す自信があるっ!! フッフッフッ、上司”犬王モノー”の犠牲がなければ、あやうく4杯目、お腹のデッドゾーンを突破していたかと思うと震えが止まらない!! だがしかし、これで終わりだヒーロー”ハチカヅキン”ッ!!」
言うが早いが怪人”犬公方ツナー”は、コーヒーが溢れないよう自ら迎えに行くと三分の一ほど飲み、そこからカップを持ち上げるとググイーッ! と顔を上に向け、一気呵成にコーヒーを喉の奥へ流し込む!
3杯目のコーヒーをなんとか飲み干し、「ヒーロー”ハチカヅキン”にもはや打つ手はない!」そう確信した怪人”犬公方ツナー”がコタツに目を移すと、そこではヒーロー”ハチカヅキン”が、背後から新しいポットをそっと取り出し、コーヒーをカップに注ごうとする姿が目に入ったのだ……!!!
「…………」
怪人”犬公方ツナー”の記憶は、そこで途絶えている。
戦いは、終わったのだ。
「新年につきパウンドケーキ一切れプラス! 新年のオススメは善哉セット! 喫茶チャントでは、ポット入りコーヒーを注文した方には、お代わりが何杯でも無料となっております!!! 勉強のお供や待ち合わせの合間に、自慢のブレンドコーヒーを心ゆくまでお楽しみ下さい。ちなみにヒーロー”ハチカヅキン”は、砂糖とミルクを入れないとコーヒーは飲めないぞ! 良い子の皆は無理にブラックにしないでカフェオレにしておこう! ヒーロー”ハチカヅキン”のオススメだ!」
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