表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
41/63

『真冬の熱いお年玉! 額面以上完全保証! お一人1日1つまで! 駅前商店街トクトク福袋!』

いつにもまして力技な気がするヒーロー”ハチカヅキン”!

 押し寄せる年末。迫り来る年の瀬。


 ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”はついに(今年の)終焉が訪れようというとき、雄々しく歩を進めながら行く手を遮る人々に、声の限り叫ぶのだ!!


『福袋はまだありま---す!! こちらが最後尾となっております! ヒーロー”ハチカヅキン”のお鉢とノボリが目印でーす!』


 年末商戦の一環として行なわれる『駅前商店街トクトク福袋!』は今年も大盛況である。

 殺気立った主婦に怯え、立ちすくむばかりだったヒーロー”ハチカヅキン”も、今ではすっかり奥様方と一緒に騒いでいる。


『ヒーロー”ハチカヅキン”の鍛えられた上腕二頭筋にご注目下さい! その上腕二頭筋の先にはのぼりがありまーす! 最後尾はノボリと上腕二頭筋のある場所でーす! お一人様1つ限りとなっておりまーす!!』


 『駅前商店街トクトク福袋!』は2000円・3000円・5000円の三種類である。

 中にはなんとお値段と同額以上の「商品券」(駅前商店街専用)が入っており、更にランダムに各種店舗の福袋特別クーポン券や引換券、ヒーロー”ハチカヅキン”グッズなどが封入されているのだ!


 ヒーロー”ハチカヅキン”だって『福袋』(5000円)を確保したい。

 だがお客様の笑顔のために、グッとこらえて『福袋』(2000円)を、受付の園田さんに取っておいてもらった。


「……ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は汚れてしまったかもしれないぞ!」


 呟いたヒーロー”ハチカヅキン”の背中は煤けている。


 福袋とは元来、その年に余った商品を「新しい商品の方が売れるし入れ替えたい」「これはもう消費期限が危ういが正月は店を開けられない」等の、棚卸し関係の問題から発生したアイデア商品だと言われている。

 売れ残りであるその代わり、値段(定価)分以上の商品を詰めるのがミソである。

 買ったお客さまからの「こんなクソ売れ残りを買わせるんじゃねえ!」というファンキーな気持ちを、「値段以上の商品が一杯入ってるからまあ許せるかもしれない」というファンシーな気持ちに変化させ、自店舗に対する購買力を落とすこと無く、在庫整理を行うことができる一石二鳥、年末にだけ行うことができる夢と魔法のの商品だったのだ!!


 だが昨今の福袋は、在庫整理の側面は薄れ(在庫整理は店の評判が落ちかねない、諸刃の剣であるのだ!)純粋に年末に行なわれる特価セールに移り変わってきている。

 更に進んで近年では長く続いた不況の影響か、「中身が見えない福袋」は損をする確率が高いので敬遠され、「中身がモロバレの福袋」が登場、そこから先に発展するには「ハズレが存在しない商品を選べる福袋」が登場する以外、選択肢は存在しなかったといえる。


その最終形がこの『駅前商店街トクトク福袋!』に代表される「欲しい商品と引換券」や、そのものズバリ「金券」が入っているだけ! という究極にシンプルな福袋たちである!!


「しかし……福袋に詰まっているのが夢や希望ではなく、固定化された堅実さなのは福袋としてどうなのだろうか…」


 ヒーロー”ハチカヅキン”はこの哲学的な問題に心を揺さぶられアンニュイな気持ちになりかける。

 が、お手伝いの時間が終わったのでハッピーな気持ちになり、取り置いてもらった『福袋』(2000円)を密かに購入し、ノボリを持ち上げ続けてパンパンに張った上腕二頭筋に、『真冬の熱いお年玉! 額面以上完全保証! お一人1日1つまで! 駅前商店街トクトク福袋!』とプリントされたサロンシップを貼り付け、怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)が花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)を人質に取って待ち受けるステージへ駆けつけると、新鮮なサロンシップの香りをそのままに、ヘッドロックを敢行する!!


サロンパ…サロンシップゥウウ!


 サロンパスだかサロンシップだか分からなくなって何とか正解を選べたような音声がスピーカーから鳴り響いた。


「ヌゥオオオオ!? 臭い! シップ臭い!! その上締め上げられる頭も痛い! 朝一番に並んで『福袋』(5000円)を苦労して手に入れたものの、「福袋とは本来こういうものだったのだろうか?」という哲学的難題に直面してアンニュイな気分に浸っていたところに背後から突然ヘッドロックを極められたように頭が痛いっ!!! そして臭い!!! だ、ダメだ、もう福袋問題なぞどうでも良くなってきたぞヒーロー”ハチカヅキン”!! この私の頭痛が痛いことに比べればアイタタタッターッ! ギブ! ギブアップ!! ゆーあーなんばーわん!」


 言い終える前からヒーロー”ハチカヅキン”の上腕二頭筋を激しくタップし、ギブアップの様子を見せていた怪人”犬王モノー”は、その香り立つたくましい上腕二頭筋から開放されると、静かに崩れ落ちたのである。


 戦いは…終わったのだ。


「真冬の熱いお年玉! 額面以上完全保証! お一人1日1つまで! 駅前商店街トクトク福袋! は朝9時からの販売となっております! ご購入の際は通行の妨げになりませんよう、整列してお待ち下さい! ヒーロー”ハチカヅキン”は明日は筋肉痛でお手伝いできないかもしれないけれど、ヒーロー”ハチカヅキン”はいつでも皆の心の中にいるから安心だ! もし必要な時に心の中でもヒーロー”ハチカヅキン”がお休みしてた時は、商店街休憩所で両腕にシップを貼って安静にしているヒーロー”ハチカヅキン”を呼ぶと良いぞ! 皆とヒーロー”ハチカヅキン”の絆は、筋肉疲労程度では破れないぞ!!」

感想・ブックマークなどお待ちしております!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ