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紫の魔女の過去世界

作者: 紫

―世界に銃が普及した、薄っすらとだが科学が浸透してきた程度の時代、街で有名な商人夫婦の家に子供が生まれた、赤子に生える薄っすらとした髪の色は普通ではありえないほど紫色で、目まで紫であった、しかし当時は薬害の影響などから多々そういうことはあり、ただ髪の色が変わっているだけならばそんなに疑問には思われなかった。


 商人夫婦の家に子供が生まれてから17年目の出来事、紫色の髪の毛を腰まで伸ばし、タレ目ながらに鋭いその目つきには少々大人びた紫色の眼光が輝く、ゆったりとした服装に大きな本を抱えて歩く文学的な少女となっていた、この話は一人の少女の不可思議ま魔法の話である。―



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 石の道に赤レンガの街並み、晴天の青空の下本を片手に私は図書館に向かう、いつもの日常、今抱える本で私はようやく街の図書館のすべての本を読み切ることになる、幼少期より通って読み続けた日課も今日で終了であることに少し心寂しい感じもしたが、それと同時に知識の増加に私は喜びを得ていた


 昔から通う図書館の外装はまるで教会のような形であり、非常に大きい、摩天楼の図書館はまるで白銀をまぶしたかのように太陽の光を反射し、木製のドアは少々趣を感じた


 図書館内部は天高くまで本が積まれている、少々ほこりっぽい館内を進み、受付の元まで本を持って行く、受付にはいつもの様に若い男性が眠たそうにペンを回している


「本の返却に来たのだけれど」


 私がそう言うと受け付けは眠たそうな顔をこちらに向けてごちゃごちゃとした受付の後ろに私の持っていた分厚い本を持って行った、そして戻ってくると少し薄ら笑いをしながら席について、私に話しかけて来た


「お嬢さん、もうこの図書館で読んでいない本は無いんだね、ここは国の中では指折りの本の数のはずなんだけれども、、、」


 私は彼の問に対して受付の机に肘を置いて率直な感想を言った


「私にとって知識は好物なの、いや、知識だけじゃない、その知識の使いみちを考えることも好き、知識で立てた思想実験なんか素敵ね、知識は思考の通貨なの、金が好きな人間がいるように、私は知識が好き」

「ははは、そうかい、しかしこれでここで得られる全ての知識は君のものだ、感想はどうだい」


 私はドアの方を向いて少々体を揺らしながら数歩進んでから彼の問いに答えた


「最高よ、世界を全てこの手に入れたみたい」


 そうして私は図書館を後にした、本を返却した後に見た図書館はあまり魅力的には映らなかった、先程までは大きくて綺麗であったように見えたそれは、今ではボロい教会もどきとしか目に映らない。




~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 家に帰る、家は幸い裕福な家庭であり、少々立派な家に住んでいた、私は部屋に戻ると別途に腰を掛けた、部屋の中は女の子らしい編み物や花から、自作の望遠鏡や論文、薬品から自筆の小説まで、知識を高めた結果や高める道具が所狭しに並んでいる、


「う~ん、、、」


 そんな私だけれども、今でも分からないものがあった、それは魔術である、魔術、それはオカルト、ファンタジーの空想上の物であるとばかりと思っていた、しかし数年前、少々試してみた呪いはあまりにも明確に効果が出た、それ以来魔術を試すと幾度と無く成功したのである、しかし未だこれが何故成立するかの理由は分かっていなかった


 世の中のものには大体に原因や理由がある、例えば夜と昼、これは周囲の天体が私達の住む惑星周囲を公転していることからできる、まあ、これは恐らく逆なのだが書物にはそう書かれているし、まあ説明はつく、他にも髪の色、目の位置、万物は説明することができる、しかし魔法だけは使用はできても私には説明することができなかった。


 



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~





 近日20歳になった、今ではもう少し大きな街に引っ越し、少し街外れの一軒家に住んでいる、仕事は薬師、しかし薬は月に一度高価な物を売るだけであり、ほぼ研究に時間を当てている。


 魔術、やはりこれの発生原因は分からなかった、しかし今では姿を若返らせる魔法、一部の空間の時間を停止させる魔法、などなど、以前使えた魔法と比べると相当使えるものが増えた、


 また、最近では街に出て図書館に行くのが日課になっていた、しかしその日課もつい数日前に終わってしまった、やはり以前住んでいた街の図書館と被るものが多く、全て見終わるまでにそう時間はかからなかった、しかし新しい知識を得て分かったことがある、一つは地球中心になど世界は回っていなかった、そして月の満ち欠けによる観測での引力の発見であった。


 しかし、これほどの事を分かりながらもやはり魔術の原因だけは未だ一切わからずにいた、古い文献をみて真似をするだけ、実際原理について書かれたものは一つもなかった。


 何もないところから火が出て、時が止まり、若さが手に入る、そのような現象は今の私の知識では到底説明できず、ありとあらゆる物は数年で解明できると思っているが、魔術だけは未だ現象解明のめどが立たない


《ガチャリ》


 考え込んでいると突然ドアの開く音がした、無論施錠はしているはずであり、ドアの壊した音はしていない、何かとドア先まで魔導書を片手にゆくと、ドアは閉まっていた、しかしドアの前には古びた本が一冊転がっていた、今の今まで見たことのない本、昔から本の虫である私には開かない理由はなかった


 古びた本の表紙とは裏腹に、中身の紙は純白の雪のように白く、手書きの文字がずらりと並んでいた、文字は嫌というほど見たことがある、非常に綺麗な文字である


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

ー前書きー


 親愛なる彼方の読者へ、物語から資料まで、ありとあらゆる文字媒体の物は全て知識である、そうは思わないだろうか、龍に乗った主人公はどのように動くか、流水はどのように動くか、二つはファンタジーと力学、それぞれ別のものとはいえ簡潔に書けばそれは観察記録なのである。


 しかし知識というのは本媒体だけではいささか不十分であるようにも感じる、膨大な知識を持ってしてもやはりわからないことはあるものだ、この本はそんな従来の本の知識では補えなかった貴女の求める知識を伝えるものである、もしこの前書きで興味を得たのであればこのページの次に行って欲しい、彼方の知識に祝福を。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ははは」


 まるで私のためのような文章に思わず笑ってしまう、こんなに興味をそそるものはない、きっと私以外は興味を持たないような内容だ、しかし今の私が最も読みたいという内容を匂わせる前書きはあまりにも魅力的に私の目には写った


 私はその場に座り込むと少々舌なめずりをしながら目を輝かせ、機体に胸を膨らませて前書きの後を行った、現在の胸の高鳴りといえば無いというぐらい胸はドキドキしている。


《ペラ》


 しかし次のページには何も書いていなかった、真っ白、一瞬視界も白くなった、何だなんだと他のページを見るもやはり何も書いていなかった、落胆した、急に熱が冷めたように前書きまで戻り、もう一度前書きを読みなおして、最後の期待を込めてページをめくる


 するとページには青い魔法陣が描かれていた、魔法陣はくるくると周り、青白い光を放っている、これは魔法は発動しておる証拠であった


「なにこれ!!、どういうこ」


 私が状況把握を終える前に魔法は完全に発動してしまった、青白い光は遂に部屋に溢れかえり、何も見えなくなってしまった、最後に見た魔法陣は私が研究していたものではなく、一体何の魔法なのか、危険なものなのかそうではないのか、全くわからず私は光のなかで奥歯を鳴らす




================================




 白い光の中、揺らめく光のように遠方に紫色の光が見える、光は私の元まで近づいた、すると耳元でただの光が言葉を発した、それはどこかで聞いたことのある聞き覚えのある声である


『知識は宝であり、発想は武器であり、知識の化身は神に等しく、貴女は知識の化物なり』




=================================


 意味の分からない台詞に気を取られている間に周囲を取り巻いていた光はいつの間にか消えてなくなっていた、周囲は真夜中、草木が生い茂る、空を見上げると星がまるで水面の気泡のように散りばめられていた


 周囲に生える草を毟り取ってみる、すると驚いた、その辺に生えている葉は行く数年前に絶滅した種類のものであった、よく見ると昆虫類も見られるがとうの昔に絶滅したものであった、魔法陣の光は青白かった、魔法の光で青は時間を指す、、、つまり


「タイムスリップか。。。私でもまだ出来上がっていなかったのに」


 恐らくは本に時間操作の魔法を仕込んでいたのであろう、魔法の知識がなければ今頃大混乱だけれども、このような事は2年後には私のできる芸当が故そこまで驚かない、むしろどうやって帰るか、そして生活するかの方に思考を回さなければならない。


「ウラトラ、オルゼムキレ!!ミットトスピナキレウラト!!」


 後方から猛々しい声が聞こえてきた、美しく鋭い、まるでベルのように可憐で、薪が燃えるように苛烈な声、それは月夜の草原に響いて消えた


 私は思わず振り向くと50mほど先に人影が見えた、もう少し近づいてみると燕尾服の男たち数人が剣を構え、それに対し一人の少女が身の丈に合わない鉄製の槍を構えていた、少女の服装は苛烈な赤、しかし髪の色はそれに反し凍えるような白であり、目は今にも溶けて落ちそうな紅色である、腰まで伸びた髪は月光を反射させ雪のように輝く。


 少女は身の丈に合わない大きな槍を燕尾服の男たちに投げつけた、槍の速度は銃弾のように速く、当たった男の首はすぐに飛んで消えた、月下の草原に赤い雨がふるのはそれから数秒後であった


「ウラトモンス!!、クレジ!!!!!」


 男たちは慌ててたった一人の少女に斬りかかった、しかし先程からのしゃべっている言語、、、まったく分からない、いや、どこかで聞いたことがある言語だ、、、私は思考をめぐらした、そう、この言語は大昔のベレッタ王国の言語の発音に近い、となれば、、、この世界は私の時代から数百年前に遡っている


「ははは!!、こんな物か逆賊共!!」


 言葉がわかるようになると少々この騒動がどういうものかが分かりそうである、ここは一旦観察するのが見知らぬ世界での生き方というもので


《ドゴン!!!》


 少女の手には白く光る魔法陣が浮かび上がり、先程まではなかった大きな槍が複製され、生成され浮かび上がる槍をさも当然のように手にとって男たちに投げつけた、魔法である、しかもこの時代であれば現役の魔法、胸が高鳴る、心が踊る、目の前が明るくなる、私の体は期待でどうかおかしくなってしまった


 この時代に魔法がある、つまりこの時代であれば魔法が何たるかを解明することも容易のはず、そう考えた瞬間私は少女の救出を決意した、男たちは魔法を使わない、つまりここで最も魔法に近い者は少女を置いて他にないのだ。


「下級魔法、アイススピア」   「中級魔法、ウォッチウィッチ」

      「下級魔法、ベクトルチェンジ」  


 決断した数秒後、私は魔法を唱える、アイススピアは氷を槍状にし複数出現させる造形魔法、ウォッチウィッチは敵の動きを止める時間操作魔法、ベクトルチェンジはアイススピアを飛ばす魔法である


 敵は動くこともできず、黄色い月の光を反射した氷の槍に文字通り横槍を入れられた、ウォッチウィッチが溶けると男たちは膝から崩れ落ちた、少女は私の方を向いて驚いた表情を向けるとそのまま手に持っている槍をこちらに向けた


「貴様は敵か!?」


 かなり警戒されているようだ、しかし少女に対し私は一切の敵意はない


「いいえ、私は貴女の魔法に感服し、思わず助けてしまった通りすがりでございます、どうかその槍を下げてください」


 少女は切れ長な目で私を見つめると、手に持った槍を背中に挿し、表情を緩めて数歩歩み寄ってきた


「そうか、それは嬉しいな、ならば助けてくれた礼をしたい、付いて来てくれるかな?」


 赤いドレスに白い髪、そして少女の爽やかな笑顔は魔法以前に魅力的であり、思わず見とれてしまった、私の時間旅行は未だ始まったばかりである、そして私はこの少女とともに魔法の全てを暴き、奇跡の力を我が物にするために歩みをすすめる。



―この話は、知識に取り憑かれた魔女の話である、魔女とは知識の化物であり、そして探究心の純化物である、紫色の魔女は太古の昔に夢を見た。―

 楽しんでいただけたでしょうか、できれば続き物にしたいと思っていますの気に入っていただければ少し気にかけていただけたりすると嬉しいです。

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