僕達は最強へ向かっている
活動報告のネタ候補に投票してくれた方のために書き上げました。執筆時間合計五時間ぐらい。
拝啓家族へ
僕が学校へ入学して二年目になりますがお元気でしょうか?
ひょっとすると僕がいない分おかずが減ったとか喜んでいるかと思いますが、こうしてお手紙を書いたのは――
僕の学校卒業の期限が早くなりそうなのを伝えるためと、現状を伝えるためです。
無事卒業できるよう、頑張るからね。
「はーいそれじゃお前ら。百数える間にスクワット百回。途中休憩した奴は五十追加ー」
『やってられるかぁぁぁぁぁぁぁ!!』
「いーち、にー、さーん……」
「完全無視だやっぱり!」
「ちくしょぉぉぉぉ!!」
集められて一週間。一日中筋トレに費やされている僕達は、その指示を出しながら欠伸を漏らして数を数える男性――『先生』の指示に従い急いでスクワットを行うことにした。
僕達は学園の二年生になったばかりである。その初日から僕達は『先生』の指導を受けることになった。
『先生』。
見たことのない動きにくそうな服を身にまとい、髪の毛や髭は伸びたまま放置している、やる気のなさそうな男性だった。
僕達以外誰もいなくなった体育館にふらりと来たのが最初の出会いで……その日の事はあまり思い出したくない。
どうやら彼にとって僕たちの教育なんてどうでもいいのと、強制的に連れてこられたこの場所――旧校舎が存在する森のダンジョンの中――で半年過ごさなければいけないということ。
強そうに見えないのにはっきり言って、強い。学校のレベルとしては最高峰の中で下の方にいる僕達だけど、だからと言って弱いわけではないと思っていたのに。
『先生』に言わせれば「思い上がりも甚だしいんだ雑魚共。雑魚の背比べしたところで毛が生えた程度の差しかないようにしか見えん」とのこと。
そして見事に『先生』との勝負に負けた僕達は、不平不満を言いながら半年後に来る試験のためという名目で、筋トレをやらされている。それが、かれこれ一週間。
これは地獄である。毎日毎日毎日毎日一日中筋トレを行わなければいけない。筋肉痛になったといっても、腕が上がらなくなっても、上体を起こせなくても。
そのうえご飯は自分たちで作って食べなければならない。食材は森の中でとってこなければならない。
死にそうなものだけ教えてやるからと言って本当にそれ以外――軽度の毒が含まれているものなどを教えてくれないので、つい三日前全員が痺れ毒で昼まで動けなくなりそうになった。
逃げ出そうとしたやつらは全員縛られて旧校舎につるされたのが五日前で、それ以降僕達は誰も逃げることを考えられなくなった。
スクワットをしながらちらりと『先生』を見ると、目をつむって地面に寝転がり数を数えていた。
一見すると無防備に見える体勢と雰囲気なんだけど、一週間もいると僕の『目』が『先生』の異常性を認識し始めることができた。
僕の『目』は生まれつき違う景色が見える。いつもなら会った瞬間に分かるのだけど、『先生』に関してはそれどころじゃなかったのか今まで見えなかった。
と、そんな風に観察していたら、『先生』は僕に視線を向けてきた。
視線が合う。とっさに冷や汗が流れた僕に対し、『先生』はにやりと人の悪い笑みを浮かべてこう言った。
「余裕そうだな。お前五十回追加」
「えぇぇぇ!! な、なんでですか!?」
スクワットをするのを忘れ、思わず抗議する僕。
それに対し『先生』は「”瞳”を使いながら筋トレできるってことは余裕のある証拠だよなぁ?」とはっきり僕の異常性を告げたうえで「ていうか、動き止めたからスクワット五十追加で二百だからな」と言って再び数を数え始めたので、さっきより結局増えたままじゃん! と叫びたくなりながらも、スクワットを再開した。
結局、スクワット二百回に陥ったのは、僕以外に四、五人ほどだった。
それから一ヶ月が過ぎ。
学校で行われる月一の合同授業で予想外の出来事を体感した僕達は、筋トレの時間が減った代わりに旧校舎の周りを決められたルートが書かれた魔法紙をもって走り回っている。
ゴールはちゃんと書かれている。ただ、ここはダンジョンと化しているのでモンスターたちや『先生』が仕掛けたと思われる凶悪なトラップが数多く存在しているのでたどり着くのが難しく、初日は全員最初の数メートルで全滅した。
現在は自分の力を使って独自の攻略を図っているのでみんなの進行度はばらばらである。
ちなみに指定されたルート以外の道を通るとペナルティーとして『先生』との一対一講義による公開処刑に近い攻撃を受けた後木の枝につるされて飯抜きという、地獄がある。男子はこの洗礼を全員受けた。もちろん、僕も。
それで僕はというと……
「あ、そこの木に触れないで。モンスターがいる」
「あ、ありがとうクロノア君。あ、そこから少し先の茂みにトラップあるから気を付けてね」
「了解」
「おいまだ先進むなよ。情報書き込んでないんだから」
「早く書き込んでよ。また私動けなくなるよ」
「そ、そしたらおでが担ぐからし、心配はいらねぇ」
クラスメイト達とグループを組んでルート通りの道を警戒しながら進んでいる。
この考え方は冒険者がパーティを組む時の考え方だという授業の教えを思い出したもので、僕達は不満のない分け方で分けた結果。
まぁそれでも衝突やら何やらが起こるからみんなでその分話し合って解決を促したりすることになったのはいいことだと思う。グループ同士の衝突もあるけど、その時は『先生』にボコられて終わる。
気が付けば先生の事を僕達は信頼していた。勉強の方は自分で何とかしろとあっさり言ったけど、なんだかんだで面倒を見てくれているから。
今にして思えば最初のあのセリフも面倒くさいという理由以外のものがあったんだろうなと思いながら、僕達は慎重に進んだ。
二ヶ月。
構内の戦闘祭で学年上位を飾った僕達を待っていたのは、嫉妬からのいじめと貴族達からの工作だった。
普段来ない僕達は基本的に学校の情報に疎い。
だからこそ、学校の基準からずれ外れたことによりいじめの対象になったのだ。
ここで僕達は『先生』が言っていた「俺が担当する奴らには全員半年で卒業させるかやめてもらっている」の言葉の意味を全員が理解した。
それでもやめられずに堪える日々が続いていると、不意に『先生』が漏らした。
「あ、お前ら。来週に学校襲撃するから武器の手入れを怠るなよ」
『…………ハァ!?』
指定ルートの走り込みと化した次に僕達を待ち受けていたのは戦闘技術。とはいっても理論ではなく当たって砕けろ精神で、総当たりの一対一からモンスターとの戦闘まで幅広いもののうちの程度が軽いものをやらせているらしい。僕達に言わせれば一対一のインターバルがないのが地獄だし、何とか苦労して倒してもダメ出しという名の肉体言語で追い打ちをかけられるので、結局地獄だ。
そんな血をにじませるような授業の連続で耳が壊れたのかと思った僕達は再度確認した。
「あの先生。襲撃する場所は?」
「学校」
『……』
三ヶ月。
学園長による『内密の指示』での『襲撃』をした僕達は、いじめを受けることなくむしろ畏怖の対象として見られるだけになったのだけど、ここで問題が発生。
なんと僕達のクラスに貴族が一人いて、その親にばれたおかげで辞めなくてはいけなくなったのだ。
本人は言うことに逆らえないのか素直に受けようとしているし、僕達の間でも賛成と反対で意見が分かれた。
先生も最初は「どうでもいい」で済ませていたんだけど、僕達の意見が対立し険悪な雰囲気が流れた瞬間に怒った。
「本人が嫌がるなら勝手に連れ戻して来い! それが出来ないならおとなしく授業を受けやがれ!!」
すると、この話をどこから聞きつけたか知らない卒業生で没落貴族から返り咲いたという人が、わざわざここまで来て『先生』に投げ飛ばされながら僕達にこんな話をした。
「ここにいるみんなは平民だから知らないだろうけど、貴族ってのは息子に対しては将来を願うけど娘に対してはより上のつながりを求めるための道具として扱うことの方が多いのよ」
うまく掌の上で踊らされている気がしなくもないけど、その言葉を聞いた僕達は即座に助け出すことを計画することにした。
それを見た『先生』はため息をついてこういった。
「やるならやれ。徹底的に。抗議してきたら大人が相手しとくから」
その頼もしい言葉に、僕達はなおさら計画の密度を上げた。
四か月。
計画を練りに練った結果、多少強引な形になったけどクラスに戻ってきた彼女。
『先生』曰く「話し合いで勝てる奴なんていねぇよ」なんて言ったけど、多分『先生』は話し合いじゃなくて別な方法で解決したと僕達は思っている。
授業の方は三か月の総まとめみたいなスケジュールで動いているところに、このクラスの卒業生らしい人達が「こっから先は俺達も教える。それがこのクラスだ」と言いながら教えてくれた。
全員が全員とてつもない実力や知識で、所属を聞いたら驚くようなところばかりだった。
猶更『先生』の正体がわからないと思いながら授業を受けて過ごしていたある日。僕達の状況は一変する。
なんと、国が主催するお祭りに招待されたのだ。
浮足立つ僕らに対し先生はため息をついて「あほらし」と言ったけど、王族からの招待ということに緊張の色を隠せない僕達のボルテージは上がっていった。
だけど、そのせいで僕達は見落としていた。自然の脅威を。
結論から言うと全員が全員モンスターにやられて死にかけた。治る程度の負傷だったのが幸いだったけど、その事実は浮かれていた僕達にとってあまりにも突然に、むしろ当然のごとく突き刺さった。
意気消沈な僕達に対し『先生』は声をかけることもせずただただ指示を出すだけ。
国からの招待を受けることはできず、旧校舎で過ごしながら、僕達は全員で泣いた。
そしてその次の日。気落ちしたままの僕達に先生は言った。
「敗北は噛み締めたか? 泣いて自分の弱さを思い出したか? 調子に乗っていたことをいまさら知れたか? それらを認識できたんなら、お前らが後はその失敗を繰り返さないようにすることを考えればいいだけだ……というわけで、来月はここではなく海の方で行うので全員行くぞー」
『…………え!?』
五ヶ月。
僕達は海の近くのある小さな村の近くに到着したその日に『先生』から理不尽に近い説明を受けた。
「お前ら宿に泊まらずにここで一ヶ月過ごせよ。起きたらここで筋トレとランニングを行い、余った時間に関しては村の人たちと一緒に漁に行ってこい。潜ることもあるだろうが、頑張れ。あと、近くの森の木を使いたいなら近くに駐屯している奴らの許可を得ないと捕まるので気をつけろよ」
『先生! それって見晴らしのいいここで一ヶ月サバイバルしろってことですか!?』
「森の中より敵がよく見えるから緊張感もないだろ。それに、お前達の先輩も指導してくれるんだ筋トレとランニング終わったら自分たちで指導受けに行ってこい」
「先生はどうするんですか?」
「釣りしてる」
『……ずるい!!』
そんな会話をしながらも僕達は砂場でランニングと筋トレを行い、そこからはみんなで話し合ってそれぞれ行きたい場所に分かれた。
砂場で体を動かすということが意外ときついということをここで初めて知った。みんなも苦労しながらも速度を落とさずに走ったりしていた……遅れたら先生が楽しそうに笑いながら追いかけてくるからね。
あとは漁を行うということの危険について身をもって体験した。水中や船の上で戦うのが難しい僕達は、村の漁師の人たちに教わりながら身の危険の回避法を身につけた。と、並行して『先生』から水中や水上での戦い方のアドバイスを受けた。けれど、そのどれもが人間離れしたものだったのでほとんど役に立たなかった。
他の人たちもそれぞれ思うところに行ってなかなかに厳しい言葉をいただいたようだった。一日の終わりに僕達は全員必然的に集まるけど、気持ちが沈んでいるのか重苦しい。
それでもそのサイクルで生活していると、釣竿を持った先生が「よしお前ら」と僕達を集めこう言った。
「ちょっとばっかし大物釣るから全員手伝え」
普通の竿で釣れる大物で手伝うことなんてあるのだろうかと思いながらも全員で『先生』のあとをついていくと、卒業生たちが何やら大掛かりな仕掛けを準備して待っていた。
「先生! 今年もよろしくお願いします!!」
「おう」
『先生』の事が好きだという彼女の声援に頷いた『先生』は僕達の方を向き直り、笑顔でこう言った。
「ちょっと海竜ぶちのめしてくるから全員で釣りあげてくれよ」
『え?』
さらっと宣言された言葉の処理が追い付かない状態僕達をおいていった『先生』はそのままロープを巻き付けてから飛び込んでいった。
『ちょ!』
「大丈夫だ。俺達も見てたし、あの人が死ぬ姿が思い浮かばない」
「さぁみんな、竿がしなったら頑張って引っ張って!」
「俺達も手伝うぜ!」
あっけにとられていた僕達だけど、しばらくして竿がしなりだしたので慌てて歯車のハンドル部分を握り、精一杯回し始める。
それからさらに時間が経つと、ザパァン! と盛大な音とともにロープにつながれた先生が引きあがり、おまけに白目をむいた全長十メートルほどの黒い海竜をその手に握っていた。
多少傷だらけになっているけど重症ではない先生は「おい今回の間引き分だ。さっさと運べ」と普段通りに指示を出し、先輩達はそれに従い魔法で海竜を浮かしてどこかへ運んで行った。
疲れて動けない僕達は、先生が自力で脱出するのを見ながら改めて思った。
とんでもない先生だと。
「おうお前ら。今この近くにある城で王様たちがパーティやってるから盗み食いしたい奴らは騎士団に見つからず、ほかの客たちに見つからずに食べてこい。王様達には話がいってるから、気付かれないなら挨拶程度してくるのもいいぜ。見つかったらどうなっても知らないけど」
……本当、とんでもない『先生』だ。
そして、期限の半年がやってきた。
試験の日が決まった僕達は、いつもの場所でいつものトレーニングをしつつ、先輩たちに色々なことを教えてもらっていた。
そんなある日。先生は急に「お前ら集まれ」と言ってきて僕達を集め、この世界では珍しいとても薄くサラサラした紙とペンを全員に渡して「お前らが今後どう生きたいのか、ここに書け」と言ってきた。
それを書いた僕達を見た先生は「いったん回収するぞー」と言って回収した。
一体どういう意図があったのだろうと思いながらトレーニングをしていた僕達だったけど、その答えは終わってから理解させられた。
試験当日。
見届け人として先輩たちと学園長がいる中、僕達と対峙している先生はこう言った。
「試験内容は簡単だ。一人一人俺の武器に傷を入れらればいい。言っとくが、試験だからといって甘くなるとは思うなよ。全員合格したクラスなんてほとんどないからな」
言い終わると、僕達の卒業試験が始まった。
先生は、言った通り手加減などなくて苛烈な攻めをしてきた。僕達もそれに応える様にこれまでに見つけたもので先制の攻めをいなし、躱し、反撃し、そして――
――僕達は、無事に卒業できた。
~一年半が過ぎ~
卒業を言い渡すとき『先生』は「言い忘れてたけど、不合格にする奴なんて、最初からこの場に残れないからな」と付け足したときの僕達の脱力感が今でも鮮明に思い出せる。
そう、僕達の年代の卒業式に旧校舎に来た僕達は思っているはず。
「もう一年半かー。はっえー」
「俺達の学校生活は一年半だからな。そっからはずっと自分達の道を突き進んでいたし」
「それより先生は? 今日は来るって言ってたんでしょ?」
「あ、うん。学園長からそんな手紙が来たから」
懐かしいクラスメイトに話を振られ、僕は内ポケットから学園長からの手紙を取り出す。
あれから。僕はクラスメイトの一人と一緒に自分の村に帰り、結婚してから村の発展及び警備などについて請け負っている。
ほかのみんなもそれぞれ冒険者になったり、商人になったり、騎士団に入隊したり、貴族社会の悪しき風習を変えようとしたり、文官になったりと、それぞれ自分が書いた目標に歩み始めた。
「つぅか先生、マジで何者なんだよ。俺達が書いた目標に必要なものだとか言ってそれぞれに渡したんだろ? 俺なんてギルドに登録したときに奨励金として金貨三十枚とCランクスタートだぜ? おまけにある程度の閲覧制限ないし」
「うちもね。というか、あの先生の授業を無事卒業できたっていうことがすごいことだって言われたわ」
「そ、そういえば騎士団に入隊した人達ってもう副隊長なんだっけ」
「そう! おかげで前よりも緊張感あるわよ」
「王族護衛騎士団の方は?」
「側近も側近。王族の近くで警備するの夢だったけど、いきなりすぎて毎日心臓がやばい」
「商人の方も先輩たちに教えを請いやすくなったど」
「こうして各々の立場になると、先生って本当すごいなって感心しちまうよな」
『うん』
そうやってしんみりしていると、後ろから「感心するんじゃねぇよ。てめぇらはテメェらで自分のつかんだ夢放すんじゃねぇ」と久しぶりに聞いた、嫌みっぽく聞こえるその口調に振り返る。
そこにいたのは、出会った当初から変わっていない服装と顔立ち、そして学園長と一緒の男性。
思わず涙がこぼれてきた僕達は、学園長の手紙から知った『先生』の名前を呼んだ。
『サトル先生!!』
ピキッ。名前を呼んだだけだというのに『先生』からそんな音が聞こえた。
嫌な予感がした僕達が冷や汗を流し始めていると、「……学園長からだな?」と確信を持った質問をされたので、圧に耐えきれなかった僕達は高速で首を縦に振る。
すると俯いたと思ったら「お前たちの前の奴ら全員呼び出せ」とあまり見たことのない、かろうじて笑顔を浮かべようとしているけど怒りがあふれ出ている表情で言いだした。
恐怖心で足がすくんだけど、かろうじて僕は言った。
「あの、皆さん暇ではないかと……」
「あん? あいつらが暇じゃないなんて関係ないんだよ。俺が来いって言って無視する奴がいたらどんな目に合うか知ってるからな」
過去にそう言った人をどういう目に合わせたのか容易に想像できた僕達は急いで先輩たちを呼び出す。先輩達も思い当たる節があるのかほとんど事情を聴かずに来るとのこと。
「あ、来るそうです」
「おう。お前ら武器の準備しとけー。俺はまず元凶叩き潰す」
「あら私の事ですか」
「そうだよババア」
ピキリッ。今度は学園長の方から音が聞こえた。
とたんにあふれ出る魔力。あまりの量に風は吹き荒れ、僕達はすくみ上がるけど、『先生』は舌なめずりしてから「行くぞロリババア!」と言うと同時に只物ではないロングソードと大剣をそれぞれ片手で持ち、突っ込んでいく。
それから先輩たちが来るまで僕達は眼前で繰り広げられる戦争のような光景に顔が真っ青になり、先輩たちが来てから今度は僕達がまとめて相手することになった(学園長の魔力を削るだけ削ったのにピンピンしていた)。
ちなみに、先生が名前で呼ばれたくない理由は『有名になりすぎたから』だとか。一体何をしたのか知らないけどね。
「よーしお前ら呑みに行くぞー」
「……せ、先生の、奢り、ですか……」
「おう。仕方ねぇから奢ってやる。立てよテメェら」
『は、はい』
激闘(と言う名の一方的な蹂躙)で倒れこんだ僕達は先生の言葉で立ち上がる。
それを見た先生は、「その前に言っとくことがある」と前置きをしてから――
「お前達は俺や学園長を除けば最強の片足を突っ込んでる。そのことを誇り、胸に刻み、これからも邁進していくように」
――褒めてくれた。
『…………』
突然の出来事に驚いて言葉が出ない僕達を見た先生は、僕達を見て「さっさと来ないと置いてくぞー」と言ってさっさと歩きだしたので、我に返った先輩たち含めた僕達は疲れてたはずの体なのに普通に笑顔で駆け出し、先生の後を追いかけた。
――これが、後の『伝説の申し子たち』と呼ばれることになるとは、先生以外誰も知る由もなかったと思う。
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