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悪なるミタマ  作者: 九尾
第四幕 敢為邁往編
62/100

挿入・回想/かつての目的

 第四真祖エリザベス・バートリは、人間が嫌いだ。

 吸血鬼同様にそれぞれの考え方を持っているのに群れをなし、個々の意志を押しとどめてでも懸命に生きようとする人間が、どうしても気に食わなかった。吸血鬼の多くは群れることはしない。それは、個々が強いから。けれど人間は群れなければ生きていけない。それは、個々が弱いから。

 かつて。これは今となっては、遠い昔の話。


 男の真祖たちは皆乱暴なものが多く、特に第七真祖などは無差別に人を殺していたモノだから、トーアとエリザベスは、共に過剰な殺人を止めるために戦っていた。

 それなのに。


 ――ある時。

 助けたハズの者たちに、化け物だからと石を投げられた。

 ――ある時。

 助けたハズの者たちに、村から出ていけと言われた。

 ――ある時。

 助けたハズの者たちに、お前たちは生まれてこなければよかったのだと言われた。


 ――どうして? どうして?

 わたしたちは、あなたたちを助けたでしょう? お礼を言うのが、礼儀じゃないの?


 ――そんな、ある時。

 吸血鬼を倒した後に、一丸となった村人が、トーアを捕まえて処刑しようとした。

 幸いにもトーアは吸血鬼。それも十字と火には耐性の強いものであったから、死ぬことはなかった。けれど、死ななかったからこそ、化け物と蔑まれた。


 ある時エリザベスは、どうしてそんなことをしたのかと、村人の一人に問うた。

 その村人は、何も答えない。大きな理由はないようだった。

 ただ、気味が悪いからと言った。ただ、自分たちと違う力を持っているからと言った。そんなことで、彼は他の者たちと共にトーアを襲ったのだ。許せないと思った。そんな理由でトーアを傷つけるなどと言うことは、許せないと思った。

 また、他の一人に問うた。

 その村人も、同じことを言った。

 また、一人に問うた。一人に問うた。一人に、問うた。

 彼らは皆、何も答えない。けれど多くの仲間が背後にいるときは、彼らはやたらと大きく吠えた。

 その時に、エリザベスは知った。

 ――これが、人間か。

 ――これが、人間というものか。

 群れねば、何もできず。群れれば、異端を排斥しようとする。己一人では何もできず、しかし結束した時にはどんな醜いことであろうと、正義の名のもとに事を成す。


 所詮は、家畜。所詮は、食料。これは、自分たちとは違う生き物だ。これとは、共存することは不可能だ。此方が信じても、信じても、信じても。いつかは必ず裏切るのだから、こちらから見限ってしまえばもう、苦しまずに済む。

 化け物と蔑まれることもなく。石を投げられることもなく。

 心身が傷つかずに、生きていける。

 だからエリザベスは、トーアに言った。

 もう、正義の味方をやめようと。

 けれど彼女は、首を横に振った。信じていれば、いつかきっと報われるから。笑顔が苦手なくせに、笑顔を作って。

 見ていられなかった。これ以上彼女が傷つくのを、隣で見ていたくなかった。


 やがて、第四真祖エリザベス・バートリは。

 第二真祖トーア・エンフィールドと、袂を分かった。


 第二真祖は、人を助け続けた。弱者の味方で、そして正義の味方でありつづけた。

 第四真祖は、人を憎んだ。弱者は敵、群れることしか能のない生物を家畜と罵った。


 いつから、だろう。

 かつてエリザベス・バートリがトーア・エンフィールドへと抱いた、憧れにも似た、そして恋慕にも似た、不思議な感情は。

 ――気付いた時には、憎しみへと変わっていたのだ。


 そして、今。

 二人の真祖は、此処に激突する。


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