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悪なるミタマ  作者: 九尾
第四幕 敢為邁往編
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挿入・大英/案内人

 いつものように、少女は男の帰りを待っていた。

 今日は、何時に帰宅するのだろう。

 遅くなるという連絡が来ないから、早く帰宅してくれるのだろうか。

 ――彼は、帰ってこない。

 もしかしたら、連絡する時間もないほど忙しいのかもしれない。ということは、彼の仕事が進んでいるということだ。それはきっと、喜ばしいことだ。

 もしそうなら、心配ではあるけれど、何も問題はない。

 ――彼は、帰ってこない。

 少女は、待った。待ち続けた。

 それでも彼は。氷川悠斗は、帰ってこなかった。

 朝日が、昇った。

 あまりの眩しさに、少女は目を開けていられない。カーテンを閉めて、少女は一人布団に入った。

「悠斗、大丈夫かな」

 呟いて、少女は眠りにつく。


 目が、覚めた。時刻は夕方。もうそろそろ日が沈む。

 自分は一体、何時間寝ていたのだろう。

少女は寝ぼけた頭で考えながら、軽く食事を取ろうと思った。シャワーを浴び、身なりを整え、部屋を出ようとしたときに。

 ちょうど、一人の奇妙な男が彼女の前に立っていた。

 全身黒い服で、黒い帽子。

「……おや。まさか本当にこんなところにいらしたとは」

 彼は少女を見て、そう言った。

 帽子を取り、美しく一礼する。

「我が姫が貴方様に会いたいと申しておりますので、ご案内役を申し使いました」

 彼の一言で、少女は総てを理解する。

 彼が、何者なのか。

 そして姫とは、誰なのか。

 あの人は、『姫』は、わたしに会いたいなどとは、欠片も思っていないだろうに。

 心の中で呟いて、「断ればどうなる?」そう問うた。

「……そうなれば、お連れの方がどうなるか。貴方様は、あの方のことを誰よりも熟知していらっしゃるでしょうに」

「――ええ。……そうだった」

 あの女は、そういう女だった。

 だから、少女は『姫』が気に食わない。また道徳観念を一切気にかけないあの女の方も、少女の事は嫌いだろう。

 互いに嫌い合っている者同志、そっとしておいてもらいたいものだが、どうやらあの女はそれすらもが嫌らしい。嫌、嫌、嫌、あれもこれも嫌だから、全部全部自分の好きなようにする。そんな子供の相手は、どうにも疲れるな。

 呆れるように、ため息。次に顔をあげた少女の視線は、まるで見る者を石に変えてしまうほど恐ろしいものであった。蛇に睨まれた蛙という言葉があるが、まさにそれだ。少女の視線に、男は僅かながら恐怖を思う。

 とても小柄な体から発されたとは思えない殺気を瞳から零して、少女は言った。

「……案内を」

「――承りましてございます」


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