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悪なるミタマ  作者: 九尾
第四幕 敢為邁往編
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奇行

 その、夜。

 アルラが察知した吸血鬼と、阿久は戦闘を行っていた。

 どういうわけか、近頃は吸血鬼の出没が頻繁だ。もしかしたら真祖が近くに居るのかもしれないと、アルラは推測していた。阿久も、そうではないかと思う。

 戦闘の中で、阿久は変身を行おうとした。

 けれど、どうも上手くいかない。阿久の肉体は、変わらないままだった。

 その隙をやはり今回も狙われてしまった。再度変身しようとしても、自分の肉体は少しも変わらない。仕方ないと、阿久は変身抜きで戦うことにした。

 幸い相手は通常種。スペックは此方の方が圧倒的に高い上、お互いに忌能が使えないという条件の上では負ける気がしない。もとより、阿久が通常種と戦うことに忌能は使用しなくても問題はない。

 阿久が忌能を使うのは、移動しなくてもいい、そして楽に心臓を取り出せるという理由があるからだ。

 吸血鬼を殴り飛ばし、右手を伸ばす。胸にある心臓を抉り出すと、ようやく忌能が発動したらしい、右掌が思ったように変身し、現れた口が吸血鬼の心臓を喰らった。

 灰を回収し、あとは帰宅するだけである。

 今回は犠牲が出る前に戦闘を行ったため、死体の処理などは必要ない。

 帰るぞ。そう言った阿久は、路上に置いたままのたくさんの食品が入ったビニール袋を両手に持って、歩き始めた。

 アルラも、阿久についてくる。


「ねぇ、阿久」


「なんだ」


「あなたは、この生活をどう思う?」


 その問いの意図が、阿久にはわからなかった。

 わからなかったけれど、今のような、吸血鬼と戦う生活の事だろうか。だとすれば、こんな生活は普通の人間には考えられないことだろう。そもそも吸血鬼の存在を疑うだろうし、それと戦うなど言語道断だと言うに違いない。


「それが吸血鬼を喰らう生活のことなら、異常だと思うね」


 だから阿久は、そう言った。


「……そうね。わたしも、そう思うわ」


 呟いたアルラの瞳は、遠くの月を映していた。

 

 帰宅の最中、アルラはふらふらと阿久の後ろを離れ、通行人に近寄って行った。「失礼するわ」と突然男の手を握ったり、ふらふらと歩く老人の肩に触れたり、終いには若い女性の胸を鷲掴みにするなどの奇行を起こしていた。

 その度に阿久はアルラの頭を小突き、「迷惑をかけた」とアルラに絡まれた通行人たちに謝罪する。

 胸を揉まれた女が頬を赤らめて「お姉さま」などとアルラを追ってきたのには驚いたが、先ほどようやく撒くことに成功した。

 一息ついた阿久は、問う。


「さっきから何やってんの、お前」


「いえ、別に」


 聞いても、答えない。やめろと言っても、聞かない。

 仕方ないので、首輪代わりにアルラの手首を握って、家まで連れ帰った。


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