表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪なるミタマ  作者: 九尾
第二幕 ウォルター編
28/100

終・真祖 ×/×/×

 ――雨が、降っていた。


「ふひ、ふひひひ」


 雨が、降っていた。

 それなのに傘もささず、彼はスキップでもするかのように、先へと進む。

 速くしないと、誰かに先を越されてしまう。

 先を越されては困るから、ボクがはやく助けてあげないと。もしニホンのケーサツや、教会の使徒共に来られたら厄介だからね。

 そんなことを思いながら、彼はスキップをする。

 そして、今。

 倒壊したビルの前に立つ。


「ふひッ、ふひひひ……。どうしたんだい、《第七真祖》ジャック・ウォルター。とても痛そうだね。ボクが助けてあげようか」


 彼は、瓦礫に話しかけた。

 その瓦礫の正体は、阿久によって倒壊したビル。そしてそのビルは、第七真祖を押し潰したビルだった。

 返事はない。

 代わりにぐじゅりと、肉が蠢く音がした。

 ぐじゅぐじゅと、ビルから這い出ようとする何かがあった。

 もはや肉の塊といって差し支えないそれを見て、彼は瓦礫を押しのけ、ふひひと笑う。


「いやいや、天下の第七真祖、《鎌鼬(ザ・リッパー)》がここまでやられるとは意外だったなぁ。てっきりボクは、あの混血者と天使の姫君がやられるかと思ったんだけど」


 ガタガタと瓦礫を押しのけようと、第七真祖と呼ばれた肉塊が蠢いた。

 それはまるで、彼にこの瓦礫をどけろと言っているかのようでもある。


「ああ、ごめんごめん。この瓦礫が邪魔なんだね。今どけるよ」


 その意図を察してか、彼はその瓦礫をどけた。

 ずるずるとビルの瓦礫から這いでた肉の塊を、彼は見た。


「ところでウォルター。一つ聞きたいことがあるんだけど」


 今は、お前に構っている暇はない。とでも言いたげに、肉の塊は雨の中、街の方向へと這い進む。

 無視された彼は機嫌を悪くすることもないまま、言葉を続けた。


「キミは以前、ボクが《教会》に落とされそうになったとき、気まぐれだからとボクを助けてくれたよね。うん、あの時は本当にありがとう。とても助かったんだ」


 だから、どうした。

 はやく、血を吸わせろ。このままでは、本当に死んでしまうだろう。

 そう言いたげな肉の塊は、彼を無視して先へ進もうとしたときに。


「だからね――」


 肉塊の視界が、闇に覆われた。

 肉塊はこれを見たことが無かったが、しかし、これがなんなのか知っている。

 これは、捕食者が、獲物を狩る際に使用する、幻術――。

 冷汗が滝のように流れるほどの嫌な予感に、肉塊は歩を止めた。

 肉塊にもし目があれば、恐らく見開き、彼を見ていたことだろう。


「――ボクは、そんなキミの強さが欲しい」


 ――雨が、降っていた。

 その日は、雨が、降っていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ