表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪なるミタマ  作者: 九尾
第二幕 ウォルター編
21/100

公正判決

 ――終焉(しゅうえん)のラッパを吹け。右に(つるぎ)、左に(はかり)。これを持ちて、公正を図り(たま)え。神に似たるものは誰か。否、誰が神になれようか――


「いい加減やり過ぎだお前ら。この後一体、誰が責任を取ると思ってる」


 人が死んだ。

 たくさん死んだ。

 死んで当たり前の命などは無かった。けれど、死んだ。助けられたハズの命は、此処で。

 十字を一度切り、玄道は一歩、ウォルターの竜巻の内へ、進む。

 血が舞った。

 教会の者とはいえ、玄道は人間だ。阿久のように吸血鬼喰いというわけでなく、久遠のように混血者というわけでもなく。

 それでも己の肉体を顧みず、《聖痕》を掲げて突き進む。

 彼の《聖痕》、六芒星は光り輝き、その部位だけはウォルターの風を影響を受けない。

 まるで風と風がぶつかり合うように、巨漢、大城玄道の巨体を守っていた。

 しかし守り切れぬ部分は多く在り、その度に肩、足が切り裂かれる。

 だが、構わない。多くの人死にを許してしまったのは自分だ。この傷は、自分への戒めとするべきだ。主よ、我を許し(たま)え。


「《聖痕(スティグマータ)》、起動。」


 ウォルターの右手の甲に刻まれた聖痕は、一際強い光を放ち始める。


「――……おい、なんだお前。なんで人間が其処を歩ける! なんで斬れない! お前、なんだよ、お前おかしいよ、何なんだよお前ッ!?」


 ウォルターは、ようやく状況を理解したのか、目の前に立つ巨漢に疑問を投げかけた。しかし、巨漢は答えない。代わり、《聖痕》起動の呪文(スペル)を刻む。


「――《公正判決(ミカエル)》」


 ドンと、何かが落ちた。

 それは、杭打ち機。巨大な、白い杭打ち機。

 玄道の右腕に装着されたそれは、一九〇はあろう玄道の約二倍、四メートルはあろうかという、巨大な化け物杭。それが、ウォルターの胸元にかざされた。


「――待て」


 ウォルターの目が見開かれた。

 これはマズイと、ウォルターの心臓が全力で警鐘を鳴らす。

 そして数日前に、オオダイラから聞いた話を思い出す。


 ――《第八》が、堕ちたそうだ。


 へぇ、第八(ヴラド)が。あいつ真面目だけど、なーんかどっか抜けてんだよなー。天然、っていうの? いっつもそんなんだから、今回もヘマしたんだろ、どーせ。あいつが消えようがなんだろうがどーでもいいけどさ、その死因だけは気になるね。

 ちなみに聞くけど、どんなだったの?


 ――ああ、いや、これが実に面白くてな。《串刺し公》が、串刺しにされたそうな。


 あはははははッ、串刺し公が串刺しとは、お笑いじゃないか! そりゃなんて冗談だ!


 ――ああ、本当に。

 ――串刺し公(カズィクル・ベイ)が串刺しなんて、なんて冗談――


「待て、待て待て、待て待て待て待て待て待て待て待て待て――」


 つまりこの杭は、そういう“モノ”か――。

 長い間続く、真祖と教会の争い。そのうち一つの大きな物事が、教会が真祖の一人、第八ヴラドを破ったことである。これにより、これまで圧倒的と思われていた吸血鬼と教会との戦力差が、裏返ることとなった。

 真祖打倒の法がなかったこれまでの教会に、ひとつの希望が差し込んだ。

 数年前に完成された技術(システム)――聖痕(スティグマータ)という、機構(まほう)によって。

 ――大城玄道という、男によって。


「そいつを向けるなそいつを退けろ! やめろ離れろ殺されたいのかァアアアアアッ!」


 ウォルターは必死で眼前の白杭を離そうと、玄道に向けて風を放つ。

 北条久遠の肉体を吹き飛ばし、久世原阿久の左腕を切り裂いたその風が。男の右甲に刻まれた《聖痕》に、その総てを阻まれる――。


「――“執行(エィメン)”!」


「やァめろぉおおおおおおおおおおおおおおおおッッ!!」


 ウォルターの絶叫と同時、白杭(ミカエル)が此処に解き放たれる。

 ――結果。

 (よこしま)なる魔を撃ち貫く聖なる杭は、ウォルターの肉体を、完全に貫いた。

 どさりと、ウォルターが倒れた。白杭は、空気に溶けるかのように、姿を消した。

 朝日が、昇ろうとしていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ