不穏
「うーん、困った! これはまた、どうしたものか……」
衝突。
鉈と斧。
超重量の激突を遠巻きに眺める、小学生にもみえる少年は、ポリポリと頬を掻く。
今日は久々に外に出て、食事をしようと思った。けれどなかなかいい獲物に出会うことが出来ず、帰宅しようとしたら、これである。
灰の山が、二つ。
そしてぶつかる、男と女。
男の方はまるでわからないが、だからこそわかることがある。
――見たことのない異能。変身。
なるほど、彼が話に聞いた《姫の花婿》。すなわち、《天使の姫君》の相方か。
それに対するは、聖職者を思わせる修道着の女。
見たところ教会の使徒。しかしあの重量の武器を易々と扱っている辺り、只者ではない。
少年が推測するに、彼女はおそらく――。
いや、それは正直どうでもいいか。
少年が興味を示すのは、姫の花婿。
あのオオダイラは「不覚を取られた」、「存外やるものだ」とか言っていたが、実際アレはどうなのか。あのオオダイラに一本喰わせたのだから、もしかしたら結構やるものではないかと期待していたのだが、これでは期待外れも甚だしい。
あんな使徒一人に手間取るようでは、先行き不安だ。
「ちぇ。せっかくこんな島国まで足を運んだのにさぁ。無駄足かよぅ」
ぶらぶらと、少年は足を揺らした。
己の座す、電信柱の上で。
二人の戦いは続く。けれどもう、少年の興味はそこにはない。
帰る家が無くなった。ならば一体どうしたものか。
考えるうちに、ふと、一人の人影を見つけた。
――ああ、そういえば。
ニンマリと笑った少年は、一つ目的を思い出す。
――今日は、このために外へ出たのだった。




