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クエスト開始

《それでは、クエスト内容の説明を開始します》


 機械らしい無機質な声だ。


《今回は、初のクエストですね。このクエストは素人には、少々難しいものですが、頑張って下さい》


 これくらい覚悟の上だが、少し寒気がする。


 ……頑張らないと。絶対助ける!


 決意を新たに固め、案内の声に耳を傾ける。


《クエストの内容は簡単。これから転送される洞窟に住み着いた魔物を倒し、その証となるアイテムを持って帰ってくるだけです。別のアイテムの持ち帰りは、個人の判断におまかせします。それでは、無事にご帰還されることをお祈りしております》


 その音が消えると同時に、足の裏に地面を感じる。


「おっ! やっと来たか。遅いぞ」


 みかんは別に怒っているわけではなく、私を見守るような表情で言う。


「ごめん」


 私は軽く謝ってから、みかんの近くへ向かう。


「さて、行くか」



 歩き始めて少し経った頃、早速分かれ道があった。


〔1*4*9*16*〇〕

〔〇に当てはまるのは次の内どれ?〕


 正面に広がる四つの道に、左から順に「32」「25」「23」「18」の数字が割り振られていた。

 この問題は、見た途端に解答が分かった私が答えた。

 選んだ左から二番目の道を進んで行くと、次は赤、青、黄の三本の紐がぶら下がっている所に出た。


〔正しい紐を引け〕


 書いてあったのは、簡単な指令と迷路のような図。

 どうやら、図に描かれた三つの色のうちどれかが迷路の「GOAL!」に繋がっているようだ。


 ……だけど、急いでいる私は正攻法で行くつもりは無い。


「みかん、予知能力ってどういう時に使えるの?」


 私の言わんとするところを理解したようで、みかんは言った。


「今、使ってみるか?」


 みかんの足元に紫色の靄が集まり出す。

 それがみかんを包み込むように動く。

 その靄は十秒ほどそこに漂っていたが、みかんの手が靄から出ると同時に霧散した。


「赤だな」


 みかんは、自信たっぷりに言った。



 こんな感じで私たちは迷いながらも、着実に進んで行った。

 例えば、アスレチックのようになっている所をひたすら歩いたり。

 落石から逃れたり。

 サーカスの曲芸紛いの空中ブランコを跳び移ったり……。


「まだ、着かないの?」


 言い出しっぺが、諦めるわけにはいかないと空元気で来たが、それももう限界だ。

 私の言葉を聞いたみかんは、右手で看板を指し示す。


〔もうすぐボス、注意!〕


 それを見て今更ながら、不安になる。


「勝てるの?」


 みかんは呆れ顔だ。


「今さら言うか? 絶対勝つ、だろ?」


 みかんは私を元気付けるように、あえて軽めに言う。


「うん。……そうだよね、私が弱気になっていたら駄目だ。頑張らないとね!」


 看板の指示に従って進んでいくと、広くなっているところが見えてきた。


「行くよ」

「いつでもどうぞ」


 気合を入れて私が言うと、みかんは余裕な返事を返してきた。



 中に入ると、そこは妙に薄暗く、人ならざるものの気配を感じさせた。


「ううぅ……なつ! また、憑かれたの?」


 突然聞こえてきた男の子のうめき声に思わず辺りを見回すと、暗くて見えないはずなのに、男の子の姿がはっきりと見えた。


「どこいくの? ねえ……」

「君、大丈夫?」


 私は、思わず声をかけた。

 男の子は自分以外に人がいると思っていなかったらしく、私達のほうを見て驚いた表情になった後、敵意が含まれる眼差しで睨んできた。


「お前、誰だ!? なつは僕が守るんだ!!」


 私は先ほどから聞こえてくる「なつ」という単語に首をかしげる。


 ……ここには、この子以外いないのだけど?


「おい、すだち、何がどうなっているんだ?」

「私も分からないけど……。とりあえず、この子の警戒心を何とかしたい」


 ……呼びかけるしかないかな。


「私達は敵じゃないよ! ここの魔物を倒しに来たの!」


 この言葉にさっきまで無反応だった男の子が反応する。


「僕らに無理なこと、お姉さん達にできるわけないよ」


 よっぽど腕に自信があったのか、強気な発言だ。

 流石に言われっぱなしはどうかと思うので、返答する。


「それは、やってみないと……」


 あれ? こっちはこっちで、かなり弱気な発言になってしまったような……?


 でもその言葉には何か思い当たる節があったのか、男の子の表情が一気に悲しげになった。


「そう言って、なつは……ううっ」


 その様子を見て、どうにかしてあげたいと思った。

 その途端、私の足元にやわらかい紺の、魔方陣が出現した。

 また私は、浮かんできたイメージ通りにもやもや……妖力を広げて、男の子に流し込む。

 瞬きをするほどの時間で傷はきれいに治ったようだ。


「う、うん?」

「大丈夫?」

「うん……」


 男の子は自分に起きたことが信じられないという表情で、怪我があったと思われる場所をじっと見つめている。

 それから突然何かに思い至ったのか、がばっと音が聞こえそうな勢いで私のことを振り向いた。


「お願い、なつを助けて!」

「勿論! その為に来たんだし……。でもその前に、自己紹介しようよ」


 分からないことが多すぎたので、二人の情報を聞くことにした。


「私はすだち。そこにいるのはみかん。よろしくね。君は?」

「僕は、ひゅうが。なつの双子の弟」

「ひゅうが君に、なつちゃんね。……それで、なつちゃんはどうしたの?」


 話の核心にたどり着いた。


「ここについた途端に、可笑しくなって……。なつ、変なものにとり憑かれやすいから、多分……」

「なるほど。ねえ、みかん。あの顔みたいなやつはどうやって分離させたの?」


 ようやく話に加われ、心なしかほっとしているように見えるみかんは、私の質問に答え始める。


「そういうやつは大抵、闇属性を持っているから反対の属性であぶりだすんだ。それ以降は、すだちも見ていた通りだ」

「了解! なつちゃんが今どこにいるか分かる?」

「さっきこっちに向かっていたから、多分、その奥にいると思う」


 ひゅうが君は入り口から向かって右手側を指差す。


「分かった。行こう」


*補足

 すだちが暗闇の中で、いち早くひゅうがを視認出来たのは猫又だからです。

 みかんは暗闇に視界が慣れるまで状況を認識できていませんでした。

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